10.ピンチは立て続けに
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グリフォンの背中に乗り、飛び始めて10分ほど経った頃、ようやく王国らしきものが見えてきた。まだそこそこ離れているのに、それはとてつもない存在感を放っていた。
「さすが、王国っていうほどのことはあるな。このまま飛んでいったら、最悪攻撃されかねないし・・・よし、森の中で降りよう。グリフォン、少しずつ高度とスピードを下げてくれるかい?」
「グアッ!」
グリフォンは頷くように返事をし、高度を下げる。同時に速度も落とし、ちょうどいい所で地面へと着地した。
「ありがとう、乗せてくれて。帰りもまた頼む!」
グリフォンは頷き、その場から飛び立った。俺とベルは、歩いて森の外を目指す。・・・と、前方からパキッという、小枝が折られる音がした。
「誰かいる・・・魔物か?」
その場に留まり、注意深く観察する。予想した通り、そこには魔物がいた。あれはゴブリンだろうか。
だが、家近くの森で見慣れたゴブリンとは違い、様子が明らかにおかしい。黄色いはずの目は赤く染まり、興奮している。
「どうやら、父さんの情報は正しかったらしい。」
ベルと顔を見合せ、そう呟く。それは家を発つ前の日、父さんから聞いていたこと。家近くの森以外、つまり結界の外の魔物が、魔王が復活してから凶暴になっているという話だ。
攻撃的になっているのは間違いなく、性格も残忍さが見られるとのこと。魔王の魔力が魔物たちに流れ込み、凶暴化されているらしい。
結界の中にいた魔物に影響はなく、その後結界から外に出ても、問題なかった。そのおかげで今、こうしてベルと一緒にいれる訳だ。勇者さまさまだが・・・さて、どうしたものか。
戦ってもいいが、武器がない。相手は4匹、武器なしでも戦えるとは思うが、試験前に疲れを貯めるようなことをする必要も無いだろう。
「見つからないように、この場を離れよう。ベル、俺の肩に乗れ。」
ベルは無言で頷き、俺の肩に乗った。そのまま、ゆっくりとその場を離れる。少ししてまた様子を伺ってみたが、どうやらバレなかったようだ。
その後も警戒しつつ森を進み、とうとう森から出られた。少し歩いたところに、王国の門が見える。近くで見ると、その迫力は何倍にも感じられた。
俺は少し緊張しながら、門へと近づく。別に悪いことをしているわけじゃないし、堂々としていればいいのだが、これが初入国だからな。
門へ近づくと、門番らしき人物から声をかけられる。
「見ない顔だな、旅のものか?入国許可章をお持ちで?」
「あ、はい。これですよね。」
俺は首に提げたネックレスを、門番に見せる。木でできた、なにかのマークをかたどったネックレス。父さんいわく、この国のトレードマークなのだとか。入る時は、これを門番に見せればいいと聞いた。
・・・が。俺は2人の門番に笑われた。首を傾げていると、ひとしきり笑って真面目な顔になった門番が、入国許可章を指さして言った。
「なんだそれは、ふざけているのか?入国許可章はカード式だ、ここにかざす所があるだろう。なんの茶番なんだ?」
「・・・は?」
俺は驚愕した。開いた口がふさがらないとは、まさにこの事だろう。父さんから聞いた方法でない、全く知らないシステムにかわっていた。
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