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9.旅立ち

☆☆☆


「父さんが悪かった。お前の言うとおり、この魔法は使わない。けれど、俺は勇者パーティの一員だ、何もしないというわけにはいかない。それはわかるな?」


「うん、わかってる。だから1つ、お願いがあるんだ。」


「お願い?」


俺は父さんをまっすぐ見て、言った。


「俺を、父さんのメンバーに入れてほしい。一緒に戦わせてほしい。」


それを聞いた父さんは、動揺を隠せない様子だった。数秒後、父さんが口を開くが、父さんが言うより先に言葉を発した人物がいた。


「そんなのだめよ!!絶対にダメ!!」


母さんだった。母さんは俺の両肩を掴み、まくし立てた。


「お父さんが敵わないくらいの敵なのよ!?イグニがいっても危険なだけよ!!」


「そんなのは百も承知だよ。それでも・・・!」


その次の言葉を、父さんが遮る。


「お母さんの言う通りだ、お前には危険すぎる。きついことを言うようだが、お前はまだ弱い。今のままじゃ、はっきり言って足手まといだ。多分、それはお前自身がいちばんわかってる事じゃないか?」


「っ・・・」


見透かされていた。父さんの言う通り、それは俺自身もわかりきっていたことで、実際足手まといにしかならないだろう。実際に目前で突きつけられると、くるものがあるが。


それでも、父さんを守る盾くらいにはなれるんじゃないかと、そんな考えの元の発言だった。父さんには、きっとそんな考えも見透かされていたのかもしれないが。


「でも、そうだな。」


すると、父さんが予想していなかった言葉を口にした。


「もっと強くなって、足でまといじゃなくなって、他の仲間と一緒にっていうなら話は別だ。」


「あなた!?いったい何を言って・・・!」


「まあまあ、話は最後まで聞けよ。イグニ、もしお前に強くなって魔王と戦う意思があるなら・・・」


父さんは俺の頭の上に手を置いて言った。


「ガッコーに行きなさい。そこでさらに強くなって、仲間を集めるんだ。信頼出来る、第2の家族のような仲間をな。」


☆☆☆


「忘れ物ない?入国許可章は持った?」


「うん、ばっちり。」


あのあとも家族での話し合いは続き、その結果、俺は父さんの指示通り、ガッコーもとい学校へ通うこととなった。どうもその学校は、勇者が校長を務めているようで、話自体はスムーズに進んだ。


といっても、無条件で通えるわけではない。俺は13歳だから、2年生から途中入学になるうえ、入学には試験が必要だった。学科と実技があるとのことで、学科は母さんに、実技は父さんに教わることとなった。


正直なところ、受かるかどうかは五分五分だ。というのも、学科は勉強したところが出れば何とかなるが、出なかった場合が終わる。実技は完全に、戦いの形態によるためだ。魔法による搦手とかやられてると、ちょいと厳しいだろうなぁ、と。


出来ることはやってきたつもりだから、あとはぶつかるだけだ。今後のためにも、まずはこの1歩目が大事になってくる。ここで失敗すれば、スタートラインにすら立てないのだから。


そろそろ行こうとしたところで、袖を引っ張られた。その先には、妹の姿があった。


「お兄ちゃん・・・その、試験頑張ってね。」


そういって、優しく微笑む妹。・・・本当に、こういう時に前世の妹がフラッシュバックするというか、今の妹に重なる現象はどうにかならないものか。


抱きしめたい衝動を抑え、頭を撫でながら屈んでいう。


「おう、絶対合格してみせるからな。」


そういって、妹の元を離れる。何故か悲しそうな目をしていたのは、少しばかり離れるからだろうか。俺も大概だが、妹も兄離れできるのは相当先だろうな。


「じゃあ、夕飯時には帰ってくるから!」


「気をつけろよ、結界の外の魔物にもな!」


「わかってる!」


俺は玄関を出て、崖から飛び降りる。指笛を吹くと、横から魔物が飛んできた。俺は魔物の背中に跨る。


「近くまで頼むよ、グリフォン!」


「グアァ!」


俺の友達の一匹、グリフォン。王国まではそこそこ距離があるため、こいつに乗っていくことにしたのだ。


「よっしゃ、って、お?」


「がうっ!」


「ベル!なんだ、お前も行きたいのか?」


グリフォンの影からもう1匹、魔物が現れる。サーベルタイガーに似た魔物ってことで、俺はこいつをベルと呼んでいた。こいつも俺がよく遊んでいた魔物だ。


今はまだ子供なので、子犬とそう変わらないサイズだが、成長すればライオン以上の大きさになる。ちなみに、こいつの本当の種族はキマイラだ。


「うし、改めて・・・いっくぞー!!」


「グァア!」


「がぅ~!!」


こうして俺たちは、王国へと飛び立つのだった。


☆☆☆

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