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ぶりきあそび  作者: 生方ツツジ
3/3

3

「鉄ーどこだー」

鉄の声だ

鉄の声が聞こえた。


叫び声の聞こえる。


「たふけてー」


近づいていく声の響きが弱々しくなっていく。

その音の鳴る方へと駆け出す。

声も近づいてきて薄暗い廊下の奥から人影とおもちゃが走ってる。その間の距離は近く手を伸ばせば届くぐらいだった。


「鉄!!」

「こんぶ!!」


二つの声が反発せずに2人の耳にすっーっと通り抜けて行き意志を確認しあった。


おもちゃの手に持っていたバチがだんだんと鉄の頭に落ちていく


「あぶなーい」


僕はそう言うと鉄の手を引っ張る。

寸前のところ爪楊枝の先ぐらいの間隔で鉄は助かる。

だけど、鉄は引っ張られた反動と疲れから廊下を前から膝をついて滑るように転んだ。

咄嗟におもちゃと彼の間に僕は入り込む。


何をしてるんだ僕は?

死ぬぞ


そんなことを考えながら逃げ道を探し続ける。だが、全然見つからない。


後ろに逃げようが鉄を抱えて逃げるの無理だし、なら置いて逃げたら来た意味がなくなる。前に突っ込むのもリスクが大きすぎる。どうすればいいのかわからなくなってくる。

今ここに人がいっぱいいたら囮に使えるのにどこにも見当たらない。どうしよう?


おもちゃは思考速度が遅いのか、目の前に現れた僕のことを標的にするのに少し遅かった。

ただ目が合った瞬間に僕を標的にしたようだった。

沈黙の中バチを頭と同じ位置まで持っていく

迫り来る恐怖に守りの体制には入れながら背中から落ちる。

空振るバチは空気を切り割る音が鳴る。

大気の中にあるガラスを割り砕く音が廊下に響き渡り反響する。


死ぬとかいう恐怖を置いていって茫然自失をしてるというよりも自分を少しの間殺して無感情になった。

少秒の間に感情を取り戻して最初に思ったのは


無理だ


その一言だった。そして


逃げられない


目から漏れ出しそうな水をせき止めるのに必死になってしまう。辺りを見回す限り自分を逃すものはない。

そんなことをやっていると、おもちゃは次の攻撃の動きに移動していた。振り上げそれを下ろし当たる寸前まで来ていた。

窓近く廊下の隅陽があまり指さないとこ、一つの光とそこから鳴る音が僕らの動きを時間を止めて見せた。

僕のポケットに合ったそれは、僕を助けた。


それを掴んで不在着信とあるがそんなの関係なく今取らなきゃいけないと思った。

僕は倒れた体を無様にも滑らせて体を打ち付けていたが、


「助けてください」

「了解しました。今すぐ頭の方を下げてください」


言われたと通りにする。


パリン

窓を割れる音が真上から聞こえて、その破片が僕の近くに散らばる。


「うわぁぁぁ」


僕は何が起きたのかわからなかった。

鉄の声が聞こえてその方を見る。

彼のそばにはおもちゃがいて、そして辺りは暗くなっていたがそれよりも黒く艶と絡まることのない長い髪を持っていた、四肢が長い彼女が回し蹴りをした瞬間に立ち会った。

おもちゃは教室との隔たりの壁を破壊して飛んでいく。


「おはようございます。イロット」

「いろっと?なんだそらゃ?」

「そんなことを話している場合ではありません」


おもちゃは起き上がってすごいスピードで向かってくる。


「てめーなんなんだよー。邪魔すんなよ。クソアマー」


おもちゃから電子音と人間の声の中間の様な音が聞こえる。

おもちゃはものすごいスピードで走りながら、バチを投げつけてくる。

それはまっすぐ彼女の元に迫り当たりそうになる。

だけど、彼女はそれを大きなバキッという音と共に真っ二つにした。

目の前の光景を疑った。自分よりも弱そうな女の子が音を超えようとしている攻撃を避けて、タイミングを合わせて壊した。


「くっそーぉ」


おもちゃは声を響かせる。

そして、おもちゃは正気を失った様に項垂れたと思ったら、顔をあげてここにまっすぐ向かってくる。

僕は嫌な予感が走った。


「避けろ てんこうせー」

「了解しました」


避けた転校生の先には鉄がいた。

おもちゃは鉄の前で爆発した。

僕と転校生は爆風を浴びたが、鉄はモロに爆発を食らってしまていた。

所々黒く焦げた制服と煤けた苦い匂いが僕の鼻腔に刺さる。

横たわり動かない身体を見て、


「鉄、、、なぁてつ おい」


彼のそばには駆け寄り抱き寄せると、意識をなくしているだけだったけどもう少しでその灯火さえもなくなりそうなぐらいか細い息になっていた。


逃げなきゃ 生きなきゃ 泣きたい


そんな事を考えながら振り返り彼女を見つける。

少しずつ歩き近づきながら縋るような目で僕は見つめる。

彼女は何事もなかったような顔で、ただ顔にかすり傷が付けてただひたすら立っていた。


「なんなんだよーこれ、なんなんだよー。なんか言えよ。なぁ助けてくれよ」

「了解しました。これはゲームです。願いを叶える為に必死になってみんな闘って殺し合うゲームです。これでよろしいですか?」

「意味わかんねよ。僕に願いなんてものはない」

「いえ、願いならあるはずです。昔から」

「だから、ないものはない。意味が分かるわけないだろ」


その願いは、廊下をこだまする。近くからも反響する。

微かにその響きが残る廊下の真ん中で、膝から落ちてる僕は彼女のスカートを持って何も考える事はできなくなっていた。

すると、彼女の鈴のような声で僕に


「ねぇ貴方はもう戦わないといけないの。戦わないと貴方が死ぬ。そして、貴方にあるものを全て失う」


変わらない音程で声を発する。

ただ冷たく聞こえるそんな声が耳から脳に伝わる。


死にたくはないけど、戦いたくもない。

死ぬかもしれない事に自分の命をかけてまで


「貴方は何にもしなければ死ぬ。なら、生きる為に戦う事を放棄するのは人間とも呼ばない愚者になるだけです」


まるで僕の心を読んだのかのようなタイミングで言葉を綴る。


「僕にあるものってなんだよ?」

「それは、、、」


彼女は急に一歩下がり、僕はバランスを崩してうつ伏せに倒れる。そして、僕の真上に跨いで立っていた。


「なんなんだよ急に」


上を見ると一つのシミもない真っ白なキャンパスが目の中に入る。

彼女の顔のそばに細く長い影が走っていく。

影が飛んできた方を見るとおもちゃの大群が集まってきていた。


「はっはっはっはははぁはっはっ こんにちは君が君が俺の邪魔をした人?ねぇねぇねぇちゃん一緒に遊ぼうよ」

「いや」

「いいじゃんかよ〜ってお前もしかして人形さん?やっぱりここに参加者いたんだ〜。じゃあそこの人が操縦者?殺していい?ははっ」


おもちゃの中から男の声が聞こえる。

一体のおもちゃがそのまま突進してきた。

それを彼女はひらりと避けて、彼女は背中に蹴りを入れる。

その勢いのままおもちゃの頭部からぶつけ、ひしゃげていた。

それでも、前からぞろぞろと走ってくる。


「逃げます」


そう彼女は一言だけ残して、僕の手を取り走り出す。

窓を一枚一枚通り越して廊下を駆ける。


「ねぇ、どこに行くの?」

「まだ決まっておりません」


そう言って会話が途切れる。

廊下には、二つの息切れの音と大量のおもちゃの足音が響き渡る。

そうして上へ上へと昇っていくとおもちゃから逃げ続けると、最上階の一番奥に辿り着く。

重たいドアを開けて2人で入る。鍵を閉めて少しの休憩する。


「ねぇ戦わないといけないのかな?」

「そうしなければ貴方も私も死にます。もう、選択肢はそれしかないかと」

「そうだよね」


痛いのは嫌だし、面倒くさいのも嫌だしどうしても戦わないといけないのか?

だけど、だけど、だけど、だけど、だけど、だけど、だけど、


沈黙の中、ドアの外からドアを叩く音が響く中「だけど」の自問自答を繰り返し続ける。

すると、急に


「イロット、面倒くさいのが嫌ならば死ねばいいのでは?」


ただ一言だけだったけど、「そうなのかも」って思ってしまう。

全部の「だけど」をかき消すほど自然の衝撃を受けていた。


なら、

「やってみるよ」


その瞬間、ドアを蹴破られ。雪崩のようにおもちゃがガチャガチャと音を立ててゆっくりと詰まりながら入ってくる。


「では、イロット。私を使ってください」

「使う?どうやって?」


彼女の段々と冷気を纏う手で僕の手を取って引き寄せられ、手のひらが彼女の胸の近くまで取られた。そして、触れそうな所で止まった。

なぜだか何をすればいいのか思い出したのように身体が、声が勝手に動いていた。


「開けプラネット」


手のひらの中心から真っ直ぐ伸ばした胸の所が光っていた。

そして、その光が広がって行き、その光が流動体となり僕にまとわりつく様に目の前がだんだんと眩しくなった。


「好きにして」


そんな魅力的な囁きがどこかしらか聞こえる。

覆い被さる光のどこか遠くから聞こえた。


「何勘違いしているんですか?私はどうなってもいいから貴方はあれを殺す事だけを考えて」

「うん」


自分の勘違いが恥ずかしくて物騒な事を言っている事に気づかない。そのまま、ただそのまま殺意だけをあれに向けた瞬間に光の強さは増して優しい温もりで覆い隠して、それになる。


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