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ぶりきあそび  作者: 生方ツツジ
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かーん

かーーん 

かーん

かーーん    かん


遠くからだんだんと何かが近づく音がする。

ゆったりとした速さで何かが

だけど、僕の歩く速さより確実に早くそして、確実に近づいてて来るのはわかる。

僕は怖くなって走り出すだけど、足音の速さは変えずに近づいて来る、足音が近くに聞こえる。

そして、追いついて真後ろにいるのがわかる。

振り返るといつも夢から覚める。



僕は武金ぶこん ちからは憂鬱な夢から覚めると

「いつものか」 

と誰もいない空間に一人つぶやく。 


この夢は小さな時からたまに見る夢だった。 

まるで金属を打つような音が遠くから聞こえて来る。その音がだんだんと近づいて来るから多分足音だとは思う。怖くなって逃げようと走っても音の聞こえる距離が近づくだけで一向に離れはしない。その音が追いついて振り返るといつも夢から覚める。音の正体がなんだったのかもわからないまま終わるそんな夢を小さな時から見ているが一向に恐怖感は抜けない。


とりあえず学校に行く準備をしないといけないと思いベッドから出る。

「痛っ」

足の裏から痛みが生じる。何かを踏んだみたいだ。

何を踏んだのか確認しようと見てみるとブリキのロボットがあった。小さな時からあるおもちゃなのでところどころに錆びついているけど大切なおもちゃの一つだ。

だから、棚の上に大切に置いてあったはずだけど。

何か拍子で落ちたのだろうと思い、元あった場所に戻す。


制服を着て、母が作ってくれた朝ご飯を食べて、学校に向かう

いつもと変わらない日常がはじまった。


 

学校に着くと、なんかガサガサとクラスメイトが落ち着きないように感じた。

席に着いてみると、高校から出来た友達の葉多はた 鉄太郎てつたろう

「はよう、こんぶ。今日転校生が来るみたいだぜ」 

「おはよう、だから、みんな落ち着きがないのか」

「それも女子みたいだから、男共は美人が来るのを期待してるんだよ」

「鉄 おまえは期待しているように見えないけど」

「そりゃ、誰が来ようと俺は不道ふどう すい一筋だから」

「すまんな、そうだったな」

そして、少し他愛もない話をしてると、先生が来る。

「みんな静かにしてください。今日は転校生が来てるので早く静かにして」

若く成人しているようには見えない女性の先生は弱々しく言っていたが、転校生が気になるクラスメイトはすぐに静かになると

「じゃあ、入ってきて」

と先生が言うと前のドアが開いて女の子が入って来る。

「東京から来ました葉空はくら りんと言います。よろしくお願いします」

朝から憂鬱だった気分が新しい風を呼んだように感じた。

彼女は黒い髪を束ねて鈴のような声で目が金色に光っているように見えるように美しかった。彼女は夜のような危ない美しさを持ちながら夜のような優しい雰囲気を纏っていた。

とにかく彼女は綺麗で、勘違いかもしれないが僕のことを睨んでいた。


知り合いってわけでもなく隣の席ってわけでもなくなった彼女との接点は1mmもない。ただ、じゃあなぜ睨んできたのかだけはすごく気になる。

一方的に知っていると言うだけか、生理的に無理なだけって言うことになる。

それはそれで悲しい。


そう思いながら、また普通の一日に回帰した。


昼食の時、教室の隅でいつも鉄と食べていた。

僕と鉄は別に陰キャというわけではない

気の合う友達と弁当を食いたいだけで普通に友達はそれぞれにいる。

だけど、今日は普通と違った。

鉄は自前の弁当を忘れて、購買に行った。

そして、鉄を待つ僕に一人の女の子が話しかけて来る。

「ねぇ、誰か待ってるの?」


鉄の想い人である不道翠が俺に話しかけてきた。

「まぁ、そうだよ」

「そうなんだ、誰なの?」

「友達だよ」

「あのさ、今日二人で食べない?」

突拍子もない事を聞かれて少し考えてしまう。


不道はかわいい子で人当たりもとても良いそうだ、隣のクラスだがよく話を聞く。特に鉄からだ。隣のクラスだから選択授業なんかで良く被るらしい。ただ僕は鉄とは選択授業が全く違うから絡みは特にない。 

そんな女の子から、友達の想い人からそんな事を聞かれたら

「二人は無理だ、今から友達が来る、その友達と一緒だったらいいよ」

友達の恋路を応援する方が妥当だとかんがえた。

「えっ、いいじゃん、その子にも説明して一緒に食べようよ」

「すまんな、僕は一人じゃなくなるが、1番仲のいい友達がひとりぼっちになってしまう、いたたまれない気持ちが押し寄せて来るから、そいつを置いてメシを取るのお断りだ」

「友達想いなんだね」

すると、タイミングが良いのか悪いのか鉄が帰ってくる。

「おかえり、こん…」

「どうした、黙って早く来いよ」

「いや、なんで?ちょっとこっちに来いこんぶ」

「あぁ」 


不道を残して教室を出ると

「どうして翠ちゃんがここにいるんだ?」

「それは自分で聞け」

「いや、聞けるかよ」

「それもそうだな、ご飯のお誘いが来た」

「二人で?」

「二人で」

「それでなんって行ったおまえは」

「嫌だ、断る、NO」

「断ったのかよ、どうしてだよ?」

「興味がないから、そして、二人じゃなくて三人だったら良いと提案している所だった」

「三人って誰だよ、お前と翠ちゃんとあと誰だよ」

「おまえ」 

「あっ俺か、って無理だよ。翠ちゃんと一緒には難しい」

「だけど、好きなんだろ?」

「好きだけど」

「まぁ、まだ一緒に食べるか決まってないけど」


そういう事を話していると、

「あの、今日はやめておきますね。じゃあさよなら」

すると、不道は自分のクラスに戻っていく。


「はぁ〜、良い機会だったのにな」

「いや、おまえがゴリ押ししてただけだろ」

僕たちは、教室に戻って日常に溶け込んでいった。

僕の周りは何も変わらないまま時間が過ぎる中、少し離れた席には、いまだに人だかりができている。転校生が座っている席には、転校生は最初クールのイメージで取っ付き難かったが、だんだんと表情が柔らかくなっていき、一旦離れていった人が、また戻って来る。鮭の産卵のようにも思えた。


放課後になり、1日が終わりそうな時間・靴箱で帰ろうとしていると、また不道が僕の日常に侵入してきた。

「ねぇ、君一緒に帰ろうよ」

「はぁーまたか?昼といい今日はどうして話しかけてくるんだ?」 

「うーん、どうしようかな?」 

彼女は人指差しを上に向けて口に置く

そして、

「ナイショ」

と笑ってみせた。

僕は…

「断る」

断固として拒否の体制であった。

「えっ、なんで?ナイショにしたから?」

「いや、今日は用があるし、帰り道は逆だろ?」

「なんで私の帰り道把握してるの?」

ニヤッと彼女が笑ってそう言う。


僕は今墓穴を掘ったらしい。

鉄は彼女と小中が一緒らしく、そして、鉄とは帰り道が逆という事で寄り道をする時以外は、僕は大抵一人で帰ってる。

というのもあって、なんとなくだが彼女の帰り道が反対方向にあるのは知っている。


「友達に君と小中一緒のやつがいて、だから大まかな帰り道を知っているだけだ」

「ふーん、そっか。まぁ用事があるならしょうがないね。じゃあ、また明日、バイバイ」 

手を振りながら彼女は帰っていく。

僕はそれを見送って、特に用はなかったが家に真っ直ぐ帰った。


この日、また夢を見た。


かーん

かーーん

って足音が聞こえてきた。

だけど、今日は一方通行のトンネルの中にいた。

ただひたすら真っ直ぐ真っ直ぐに走った。

やっぱり足音は少しずつ近づいてくる。

だけど、奥から少しずつ光が見えて来る。

ゴールがあった。

あともう一歩で着く所で追いつかれた。

今日は、本当に不思議だった。

だって、最後に振り返った瞬間、追いかけてきていたあいつが

「頼って」

と一言言ったとこで目が覚めた。


いつもとは全然違う夢だった。

目が覚めたのは早朝と言ってもいいぐらいに、空は爽やかな青色に覆われて、太陽の橙と重なる所は白くなっている。

ふと、目の端に映る一つのロボットのおもちゃが急に気になった。なぜだかは知らない、ただ気になっただけだ。ただそれだけだった。

だから、気づかなかったんだろう、枕元にあった招待状に。


早かったけど学校に向かうことにした、早朝高校生がもう出てもいい時間にまだ学校は開いてないので、少し遠回りをして、少し高い所にある公園で登る太陽を見たいと思っていた。


公園に着く、太陽の位置が朝見た位置と少しずれていた。

まだ、時間はある。見たくない夢・突然接点作ろうとした同級生に頭を抱えながら、公園のベンチでただ座るだけ。


気がつくと、多くの時間が過ぎたのを伝える太陽が陽気な空気を使っていた。

時間はHR時間を過ぎ、昼前だった。

僕はただ急いだ。


走った、いつも通る交差点や信号機を通過する、走って走って、夢中になって走り続けた。

だから、気づかなかった違和感に。


学校に着くと、四時間目の終わりらへんだった。

校門をくぐり、教室まで行く、着いて教室を開けると、

誰もいなかった。数学の教師もクラスメイトも。

そこで、終わりを告げるチャイムが鳴る。

だけど、誰も出てこなかった。

チャイムの余韻が終わる。そこには、恐ろしさを感じさせる無音が続くそこには、ただ広がり続ける静けさだけが、恐怖がより一層襲う。








その沈黙を打ち破るかのように、一つの足音と太鼓の音が聞こえ始めた。

階段を登る足音は僕の元に少しずつ近づいて来る。

それを、追っかけるように太鼓も聞こえる。

だんだんと近づく、そして階段を上った向こう側から一人の男が走って来る。すぐ後には、太鼓を持った兵隊のおもちゃが追いかけている。そのおもちゃはとても大きく平均身長の男性よりも少し大きかった。

「助けてくれ」

追われる男は叫ぶ。

意味も分からず僕は逃げる。

男はすぐに僕を追い越し前に出る。男の横顔は少し笑みを浮かべていた。

すると、目の前が真っ赤に染まる。


「うっぁぁーーあ」

声のならない叫びが響く。


男の後頭部に太鼓のバチが刺さっており、男は死んだ。

すぐに思った。


死ぬ… 嫌だ死にたくない。


僕はあまりの衝撃に足を止めていた。だけど、すぐに走り出そうとした、このままだと死んでしまうと思ったからだ。


嫌だ嫌だ嫌だ、ここで死にたくない。


僕は不幸にも転んだ。

血溜まりに足を滑らせてしまったのだ。  


終わった


そう思った時、兵隊は動きを止めた。

カチカチカチと音が鳴り始める。

背中にあるゼンマイが回り始める音だった。

僕は、他人の血を纏って走り出す。


生きてる。生きてる今。


学校玄関を目指して走る。その時、


「だれかー助けてくれー」


上から聞こえて来る。知ってる声だった。


「鉄っ」

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