減る缶コーヒー
俺は寒いのが苦手だ。
苦手は大人になっても克服できるものではないことが、最近わかった。
外回りの仕事は苦手だ。
仕事だから仕方ない。仕事だから頑張る。
あっちこっち行くと「寒い中、大変だね。」と温かい缶コーヒーを頂くことが多い。
俺はミルクティーが好きなんだけど、だいたい差し入れはブラックか微糖のコーヒーだ。
ブラックは先輩が先に選んでしまうので、微糖が俺のもとにやってくる。
何がきても寒い時は嬉しい。これで暖まれる。
缶を手で包むように持ち、全力で缶の温かさを盗む。
そうしていると手は暖まり、缶は冷えていく。
温かさを奪われた缶コーヒーは何故か飲みたいと思わない。
外が寒いから、やはり暖かいものを口に入れたいのだ。
冷めた缶コーヒーをリュックにしまった。
車や家にも飲まなかった缶コーヒーがあちらこちらにある。
最近は、缶コーヒーを飲んでくれる人がいるから、少し減ってきたか。
その人とは、仕事の同期で友達のような関係だ。
会社について、缶コーヒーを飲んでくれる同期の彼女に会った。
「これ、あげる。」と冷めた缶コーヒーを彼女に差し出した。
「また微糖じゃん。飲まないの?」と彼女。
「ミルクティーの温かいのが飲みたいんだよ。この微糖は貰いものだから、選べないんだよ。」
「マジ?乙女じゃん。ってか、私いつも貰い物の貰い物してたの?」
大笑いする彼女。彼女の大胆な笑い方が好きだ。
いつも、何気ないことで大笑いしてる気がする。
「今日さ、寒いから鍋しない?」と彼女からの誘い。
「家で鍋?外で鍋?」早く家で暖まりたい俺。
「もう外出かけたくないでしょ?家でどう?」
「うん。それがいい。」返事をする俺。
感染症が流行りだしてからは、俺の家に集合が当たり前になっている。
毎週金曜日になると、同期会という名で一緒にご飯を食べる。
前は2週間に1回のペースで約束したり、しなかったり。
それがいつの間にか毎週の恒例行事みたいになっている。
嗚呼、毎週から毎日にならないだろうか。
そろそろクリスマス。
クリスマスは日曜日か。仕事は休みなので会えない。
金曜日だったら良かったのに。
もし金曜日だったら、恒例行事ということで約束なしで会えるかもしれないのに。彼女に予定がなければ。
鍋が終わったら、思い切ってクリスマスの予定聞いてみようかな。金曜日じゃなくても彼女と一緒にいたいから。