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3-9「蟻の大群もびーっくりだわ?」(7P)
「わた、
…………わたしの。」
悔いの混じった赤面に変わり、
「ひと……、ひとり芝居にっ……!
不覚っ……! 思い出した……!
──くっ……! 穴があったら入りたい……っ!」
「……ふ……!」
みるみる自爆して行った彼女に、笑いが漏れる。
ちらりと見下ろすその先で、彼女が両手で顔を覆う。
(────……フ!
……いい空気だったのに、何やってるんだ?)
心の声も穏やかに
エリックは一つ、噴き出し咳をこぼすと、意地の悪い顔で微笑みかけた。
「──ふふ、また、思い出したんだけど?」
彼は笑った。
柔らかくにぎった拳で、口元を隠しながら。
「もー、忘れてって言ったじゃんっ!」
彼女は叫んだ。
恥ずかしさをはじき返すような、勢いのある声で。
ノースブルク諸侯同盟・オリオン領の西の端
ウエストエッジの一角
通りを行くミリアが、
『……やばい! 通り越しちゃった!』
と言い、二人で慌てて引き返したのは──
この、数分後の話。
────そして 彼女は聞くことになる。
布の問屋から────
耳を疑いたくなる事実を。
#エルミリ




