3-9「蟻の大群もびーっくりだわ?」(5P)
「……いや、
早くハゲそうだなって」
「はっ?」
「眉間にシワも残りそうだなって」
「ちょっと。」
「…………まだ若いのに…………」
「それ、どういう意味だよ?
俺の親族に毛髪の薄い人間はいないんだけど?」
『……哀れ……』と全力で物語るミリアに、思わず食って掛かる彼。
そんなことを言われたのは初めてだ。
しかし、ミリアの調子は変わらない。
彼女はふらふら〜と頭を揺らしながら、ゆる〜い雰囲気で言うのである。
「親とか云々じゃなくて、難しいことばっかり考えてて気苦労が多そうだなあって思ってさー。
もっと気を抜いてぬる〜く生きていけばいいのに〜」
「君に言われなくとも。
抜くところでは抜いてるよ、ちゃーんと」
「ほんとにー? さっき『いや、こんなに笑わないよ』って言ってた気がするんだけど~」
「…………」
(──確かに。それは、そうだけど)
表情を真似されながら、覗き込むように言われ
言葉に詰まったその瞬間。
彼女は、すっと身を引き、戯けた様子で肩をすくめ、
「……おっと、これまた失礼っ。
キミのこと何も知らないのに、ちょっと言いすぎたね?」
「………………いや」
「でも笑った顔いい感じだったから、もっと笑ったらいいと思う〜」
「…………」
すっと距離を取り、前を向きながら
かる~いトーンで言うミリアに
なぜか 言葉を返せなかった。




