3-9「蟻の大群もびーっくりだわ?」(3P)
「……10歳ぐらいのころかな?
町の外れにバザールが来てね?
すっごく綺麗なワンピースが混じってたの。
わたし、
はじめはそれが何なのかわからなくて。
おじちゃんに『これ、なに? すごく綺麗な色』って言ったら『ワンピースだよ』って教えてくれたんだ」
「…………へえ」
「──もう、ほんっっっとにびっくりしちゃって!
『えっ! うそでしょっ!?』って!
だって服って言ったら黒か灰色しか知らなかったんだもん!」
「……フ! ……うん、それで?」
弾む声に釣られてこちらも綻ぶ。
それに応えるように、彼女は手を合わせて言うのだ。
「それでねっ?
『うあああ、きれー! こんな服があるんだ!』って感動してたら、おじちゃんが『シルクメイル地方のウエストエッジという街で流行ってるんだよ』って。
『あそこの国は服が華やかなんだ、綺麗だろ?』って教えてくれたの!」
言うミリアは、とても浮き足立っていて『幼かった彼女の感動』がとてもよく分かった。
その様子に────
エリックが感じるのは『誇らしさと喜び』だ。
話す彼女の声のトーン、
華やいだ表情を見れば、わかる。
彼女の中で
『この街の服が、どれだけ衝撃的だったのか。
我が国の産業が、巡り巡って他国の人間を動かしたのだ。
胸の中。
じんわりと嬉しさを感じるエリックの隣で、ミリアは嬉々とした顔のまま、ぴっと人差し指を立てると、




