3-9「蟻の大群もびーっくりだわ?」(5P)
「今活動しているのは確かに『リック・ドイル』と『ココ・オリビア』だけど。
産業を盛り立てたのはオリビアの母『ココ・ジュリア』なんだ。
ジュリアは当に引退していて、オリビアは2世に当たる。
君に影響を与えたのは、ジュリアの方だな?」
「なるほど〜。
あの二人、目が、隠れてるじゃない?
人が変わってるなんて全然わかんなかったなあ〜!
……かっこいいよね、ココとリック。
はぁ〜〜……」
「…………」
……着付け師の憧れなのだろうか。
言いながら、恍惚と頬に手を当てるミリアの隣で
エリックは、『こほっ』と照れを逃すように
口元を隠して咳払い。
続けてすぅっと息を飲み込むと、
「────……元々、服飾に関してはシルクメイル地方でも華やかな方だったんだけど。おかげさまで『国のカラー』として、『産業』として根付いたんだから。
見事だよ。恐れ入ったと思うぐらいだ」
ここ20年。
様変わりしていく産業や街並みを思い浮かべつつ微笑むエリックの、雰囲気と口調に引っ張られ
ミリアは
彼を『じ────』っと見つめて────
「…………キミの発言、たまにおもしろいよね?」
「……? なんで?」
「なんかそういう……政治的分析みたいな?
国を動かす立場でもなかろーに。」
「……だから。
『国の政策・上の方針や盟主の考えに関心を持つのは当たり前のこと』だよ」
「…………へいへい、そうでございました」
言われてミリアは、ため息をつきつつ目線を斜め下の方に流し、口を平たく伸ばしていた。
(マタ 言われて シマッタ)と、顔のパーツを引き伸ばす隣で、エリックは前を向きつつ言葉を続ける。
「…………間違っているなら間違っていると声を上げないと、国はどんどん狂っていく。
国とはいえ、動かしているのはただの人だからな。
先の大戦に巻き込まれた時のように、これからの時代もそういった過ちを繰り返さないとは限らない。
常に目を光らせておくんだ。
『いつも見てるぞ』って」
「………………」
至極まっとう・真面目な意見に、ミリアは皿の埋め込まれたような瞳を返す。
その、まるで猫のような目に
「なに? その顔」
と、エリックが首をかしげ────
ミリアは
十分
間をとり
言う。




