3-8「お願い、黙ってて!」(5P)
「────なんかっ、こう、
ぽろっと……いや、ズバッと。
けっこう堂々と、宣言してしまい────……
多大なるご迷惑をおかけしたことを、ここにお詫び申し上げまス」
「────はあ……
なら、今度から気を付けて。
相手が俺だったから良かったものの、他のやつだったら……君が予想もしないような目に遭っていたかもしれないだろ?」
「…………キミ、ほんと正論いうよね……」
「口に出してしまったものは、もう撤回できないからな。
常に注意を払っておかないと」
『当然だよ』と言わんばかりに、吐き出す息と共に溢して。
彼は、そっと目を伏せた。
……彼女の手前
呆れを交えてそうは言ったが
(──ミリアが警戒するのも、無理はない……か)
彼女が言いたいこと、懸念するのもよくわかる。
『身分が明らかになること』
『正体がばれること』
そのリスクやメリットについては彼自身──常にそばにあるからだ。
『盟主』の自分には皆すり寄ってくるし、『融資』という名の金の無心をしてくるやつもいる。あからさまに媚び諂われることもある。
ラジアルのほうもでもそれは同様だ。
裏社会で『ラジアル』を聞いたことのある者には、名乗るだけで十分な牽制になる。
『盟主』『スパイの頭』『モデル』……
外から見えぬ立場が露見した時。
相手の態度が変わることは『往々にしてあること』だ。
“良くも、悪くも”。
エリックは彼女の言い分を反芻し、沸き上がる気持ちを、言葉として漏らし始めた。
「……本当なら、
『この国にそんな人間はいない』って……
言いたいところなんだけどな……」
「いや〜〜……、
全員がイイヒトだったら、気持ち悪いよ〜。
『国家レベルで洗脳でもかけてる?』って思うじゃん? そっちの方がこわいよ!」




