3-7「ねえ、付き合って♡」(8P)
(なんか悔しいー!!
でも言ってること正しいー!!
言い返せない悔しい。くっそ……!
わたしがもっと! 勉強していれば……!)
と、後悔する気のない後悔と、張り合う気のない悔しさが吹き乱れる傍らで
(…………マズいな、怒らせたか?)
エリックは、こっそり懸念をにじませていた。
間違ったことを言ったつもりはない。
今までの彼女とのやりとりから考えて、これぐらいで黙り込む女性ではないことも推測していた。
────しかし。
彼女は今、拳を作って黙り込んでいる。
「…………、…………」
(────しまった……)
物言わぬ彼女に、エリックの胸の内、じんわりと湧き出すのは焦りだ。
普段反応がいい人間が突如黙りだすと、周りはどうしていいか、わからなくなる。
彼女はひときわ反応がいいタイプであるから
この沈黙は────、彼にとっては、未知数だった。
(………なんだ? 我慢してる?
表情から察するに『悔しい』……といった感じか?
でも、わからないんだよな……
彼女は、この国では異色だから)
ちらりと横目で観察しながら考える。
彼はまだ、ミリアの表情から考えを汲み取れるほど、彼女と接していない。
彼女は、育った環境が違う。
マジェラという遠い南の国から、一人
国を超えてきた人間。
わからないといえばわからなくて当然、なのだが
────ふと。
エリックは、その沈黙を打ち破るべく。
そして、何気なく。
ミリアに向かって目を向け、問いかけていた。
「……そういえば君、
なんでマジェラから来たんだ?」
「…………え?」
それは、打開するための声かけ。
言われても小さく目を見開くミリアに、少しだけ。
安堵の息つく。
ただ単に口から突いて出たものだったが
暗に
彼女に しゃべってもらいたかった。
無意識のそれに、気づくことなく。
エリックはそのまま目配せすると、
「理由があるんだろ?
わざわざ国を超えるなんて────」
「ま、待ってっ」
淀みなく出た言葉にミリアは
慌てて ストップをかけたのであった。




