3-7「ねえ、付き合って♡」(7P)
「…………君。
『普通』って言葉の意味、理解してるのか?
辞書を持ってこようか?
勉強した方がいい」
「──あのねおにーさん?
キミもね?
『遠慮』とか
『配慮』とか
『気遣い』って言葉、しってる?
ねえ、知ってる?」
「それはこっちのセリフだよ。
君は、自分のことをわかっていなさすぎる。
『普通』って単語、調べたことある?」
「ないです」
「それとも君の国では同じ言葉でも意味合いが違、……”無い”?」
それを理解して、
思わずカツンと音を鳴らして立ち止まっていた。
急停止した彼に釣られて足を止めるミリアだが、しかし『ひょいっ』と肩をすくめると
「だって、わかるし。
わかるもんを、調べる必要無くない?
『普通:ありふれていること。一般的であること』」
その、『それ以上でも以下でもなくない?』と言わんばかりの表情が
エリックの心に火をつけた。
「────それ、誤用を招く原因だからな?
聞いただけの言葉をニュアンスだけで理解したつもりになって、間違ったまま使うのは、よくある話だよな。
そういう思い込みや怠慢が、間違った言葉を広める原因になるんだ。それは、意味の取り違えから、トラブルを引き起こす火種にもなりかねない。
言葉というものは、時代と共に変化して来たものではあるけれど、指摘を受けたときに恥ずかしい思いをするのは君だぞ? 早めにきちんと調べて、正しい使い方を理解しておいた方がいいと思うけど?」
「……………………っ!」
言った言葉の4倍ぐらいになって返ってきたそれに、ミリアの顔が苦悶に歪む。。
その頬、固く
その拳、固く
その顔、反らし
心の中、呟く。
(──この前からなんとなくそう思ったけど……!
このお兄さん、正論でパンチしてくるタイプの人だ……ッ!)
彼から顔を背け、ぐぅっと握りしめる拳。
眉間にシワを寄せ、唇をへの字に曲げて。
声に出していないだけで、その顔には『く──っ』とでっかく書いてある。
#エルミリ




