3-7「ねえ、付き合って♡」(3P)
「……どちらにしても、荷物持ちだろ?」
「『ひま』って言ったのが運の尽きです」
「……やっぱりな。
『暇』とは言ってないと思うけど?」
「『休み』っていった。ひまじゃん」
(……むしろ、仕事中だよ)
と、唇の裏で呟くエリックの隣で
ミリアは『ふふん』とすまし顔で乗り切ろうとしている。
そんな態度に、小言を言おうとするが──、それを、ため息に逃して諦めた。
いちいち彼女の揚げ足を取っても、仕方ないと判断したのだ。
それをせずとも
『彼女に取り入る』ということに関しては、着々と進んでいる。
現にこうして買い物に誘われて────
いや、引っ張り出されているのだから、これは前向きに捉えた方がいいだろう。
現状を鑑みて、
エリックは「ふうっ」っと鼻から息を逃すと
黒き青の瞳で宙を仰ぎ目をむけて、
「……で、聞き忘れたんだけど。
どこに行くんだ? 夕飯の買い物?」
「ううん、布屋さん」
「……『布屋』?」
「そうそう~!
普通のところじゃなくて、いわゆる問屋さん。
組合の会員証がないと入れないところね。
たっくさん布あるから、多分驚くと思う~」
「──布の……問屋……」
自分の隣をせかせか歩きながら、ポシェットの中から会員証を引っ張り出し見せるミリアに、思わず小声で呟いた。
(────へえ?
…………これは好都合だ)




