1-3「ここ、ここ。こっちこっち」(1P)
ミリアは、へこんでいた。
「…………どうしたんだよ、さっきから黙って」
「…………いや…………
なんて言うか、反省だよねって思って……」
「反省?」
「……お兄さんの言う通りだなーって思ったっていうか」
青い空に白い雲。
ふんわりと鼻をくすぐる焼きたてのパンの匂い。
時刻は昼を過ぎた頃。
昼食時はごった返しているこの露店街も、今はすっかりと歩きやすくなっていた。
彼から荷物を取り返すことをあきらめて、エリックと肩を並べて歩く彼女は、口をとがらせしょぼんとした顔でため息をひとつ。
振り返るは先ほどのこと。
ミリアの中、ふつふつ湧き出るのは反省の気持ちだ。
「……はぁー……
いくら鬱陶しかったっていっても、力では確実に勝てない相手に、あんな風にさ~……
わたしとしては『買い物帰りなんです~』って伝えたかっただけなんだけど、どーも伝わらなかったらしい……」
語尾も小さく悩ましげに。
ハニーブラウンの瞳をまぶたの中で迷わせながら、胸の前で組んだ指をもどかしそうに揉む。
そんな彼女の様子に、エリックはまた、ため息を一つ。
「……あれでそのつもりだったのか?
どう見ても煽ってるようにしか見えなかったけど?」
「煽っているつもりはなかった!
……しかし、どーも……」
「”煽ってる”だろ? 怒らせてるんだから」
「…………ぐうの音も出ない~……」
呟く彼女は困り顔だ。
『はぁ、』と小さくため息をつき、前を見つめたまま肩をすくめてドヨンとしたオーラを放つ。
まともに反省する彼女に、エリックが
(……へえ、自覚はあるのか)と
こっそり見直す先で、ミリアはひょいっと肩をすくめ彼を横目で見上げると