9-2「二の刻 東の空 光りたり」(6)
「さっきのはなし。ガチで光 見に行かね? 光の根元に、お宝眠ってるってうわさあるんだよ」
「……だ~れがそんなこと……」
コルトの口から蘇ってしまった話題に、ミリアは一気にダルさを押し出しため息をついた。
適当なことを言うものである。
あんなところにお宝が埋まっているわけがないのに、なぜ好き好んであんなところまで行こうとしているのか。
光も『見に行かない』と言った。
なのに、どうしてこうも──……
すまし顔の下、(はあまったく)を転がすミリアだが、コルトは希望を捨てていない。
ぼさぼさの金髪の奥・スカイブルーの瞳を輝かせると、工具を握る手に力をこめ、
「みんな言ってる。すっげぇ光だったって! あれはぜったい、お宝眠ってるって!」
「…………はあ………、
…………………光ったのってさ」
言いながら、ミリアはだるーっとカウンターの下に手を伸ばすと、大きな地図を引き出しそこに広げた。
そして、背を丸め頬杖を突き、東の森を指さしながら、
※
「……この辺でしょ?
なんも無いよ、行ったことあるでしょ?」
「おれ、ない。おれ、この辺から、でたことねーもん」
「……マジか~……」
「ん。」
予想外の返答に、ミリアは再び苦笑いを宙に溶かした。
コルトは現在16歳。
背丈はいっぱしの成人男性よりあるから忘れてしまうが、そうだ。彼はまだ未成年だ。
一応、領の条例で未成人のみ夜間出歩きは禁止されているし、親の監督責任にもなる。
下手したら民政管理局にしょっぴかれてしまう。
マジェラ出身のミリアからすれば『いや16歳の男の子だよ?? 過保護過ぎない? 街は全部俺の庭ぐらいじゃないの16歳??』と首を捻ってしまうのだが────
──考えてみれば納得なのだ。
コルトは基本怠惰なやつだ。
基本、そこまで意欲的に動かない。
いつもだらだら、だるだる。
『めんどくせえ』が口癖で、運動はできるし腕力もあるがやんちゃ坊主ではないのである。
(──それに、この辺ってここだけで生活できちゃうもんなあ……、商店街の中だし、それもそっかぁ)
そう、このあたりの店事情や行動範囲などを予想して、”納得”を空に描くミリアの傍で、コルトは”ぶうー”と不満げに頬を膨らませると、ジト目で述べる。




