9-1「……なあミリア。俺は、割と何でもできる方だったんだ」 (7P)
「──もしかして。この辺りの水質が影響しているのか? そもそも魔道に向いてない水質だとか? 集束の際に、水本来の密度が関係して」
「…………。」
────ふわっ……
しゅるるるるる……
くるくるくる……
ひゅーん。
しゅるるっ、るるッ、るるルルルルルルルルルル。
「──いつもよりシュルシュル多めに回っております。」
「…………なんだか微妙にムカつくな」
「『水質や環境のせいではない』、と言いたかった。」
「…………喧嘩売ってる?」
「だってじじつ。」
……いらぁ……っとジト目を送る彼。
スン……と真顔で答えるミリア。
──かたや、理解は早い癖に、適性が残念なのか魔道を操れないエリックと。かたや、適正はあるのに理解が追い付かず学びを投げたミリア。
二人のあいだを、微妙な空気と、高速で回り続ける水球の音が支配して──……
はう……
無言の視線の応酬に、負けを示したのはミリアの方。
(意地悪してる場合じゃないよね、大人げないことしないの、わたし)
いけない、いけないと首を振り、ミリアはエリックに視線を戻した。
──そう、彼は、困っているのだ。
未知なる魔法に挑戦しながらも、上手くいかなくて困っている。
そもそも魔道の血筋を引いていない他国の民、マジェラの民が感覚でわかることがわからないのかもしれない。
──それも、定かではないが──
ミリアのするべきことは、彼を悪戯に煽ることではなく──
共に考えること。
そう、心の中で理解して。
ミリアは悩まし気に、エリックの指先でべったりと張り付く水(球と表現できない)を凝視すると、
「……技術の問題なのかな? 気持ちじゃない? 気持ちが固すぎるんじゃない?」
「──────どーせ俺は堅物だよ」
「あああああああああああもううう、そんなこと言ってないじゃん!」




