9-1「……なあミリア。俺は、割と何でもできる方だったんだ」 (4P)
「すまない、ミリア。君をバカにしているわけじゃないんだ」
「どこが」
「あ~……、だから、ほら。君はおそらく感覚型だろ? 俺は理屈型だから、理論立ててくれないと理解しがたくてさ」
「うん」
ここまでは悩まし気。
そんな彼に、そよりと同情が沸いた時。
彼は、腕を組んで真顔で言う。
「……運動に関しては感覚で出来るんだけどな」
「うんどーしんけー良いもんね。はらたつ。」
(やっぱハイスペックむかつく)
────心底。
心底真剣に悩みながら運動神経自慢をしてくるエリックに、秒も待たずにぼそっと返したミリア・リリ・マキシマム。
もちろん彼にその気が無いのは解っている。
わかっているのだがやっぱりムカつく。
(エリートむかつく)
とは思っているにもかかわらず、困ったことに、良心がチクチク痛むのである。別にエリックに惚れちゃいないが、惚れちゃいない、のだが…………
(いつも余裕綽々で『俺を誰だと思ってるんだ?』なおにーさんが、こまっている。唸っている。んむ、んむむむむ……)
腕を組み目を閉じて。
渋い顔を空に向け悩みまくるミリー。
並びたてるのはエリックがしてきてくれたことだ。
エリックはこれまでに、いろいろな事を教えてくれた。
マジェラから来てひとり、ずぅっと自分で調べ理解してきた街の風土や歴史。盟主の名前。
石鹸が名産なこと、ミリアも知らない貴族の名前に、その貴族の人となりと付き合い方。
──それに感謝を抱いたことが何度もある。
そんな彼に、自分はこれ以上意地悪をするのか。
(……うん、意地悪やめよ。助けてもらってるのに、大人げないね?)




