8-12(8章完)「……幸せお兄さんかもしれない……」(7P)
「……ヘンリー。頼みがある。俺に力を貸してほしい」
※
「正直に話そう。俺は今、手が回らない状況にある」
ヘンリーとの会話の末。
エルヴィスは深刻を纏って彼に述べた。
もはや『頼るのが苦手だ』とか『迷惑をかける』などと言っていられない。アルトヴィンガの件もウエストエッジの件も、最悪を招く可能性があるのなら見過ごせない。
『気にしすぎ』『飛躍しすぎだ』と言われても、民を護るためだ。些細な異変でも把握し、小さな不穏でも調べ上げ潰す必要がある。
それにはもう、エルヴィス本人のつまらぬ意地やプライドなどという、糸くず一本の価値もないものは捨て去るのが最良だ。
自分の声掛けに緊張を滲ませるヘンリーを見据え、盟主エルヴィスは続きを放った。
「先の円卓会議で突かれた死亡事件に加えて、『ミントペール街道沿いに黒衣の悪魔が現れてな」
「ミントペールで黒衣の悪魔……!?
冗談でしょう、あいつらの生息地はもっと南のはずで……! いや、そんなことより、大丈夫だったんですか!?」
「ああ。初期対応は行った。
しかしこのあと、黒衣の悪魔どう動くのか、何が目的なのかわからないのが現状だ、加えて」
「……なんでまた……! ああすみません、それで、続きを」
ヘンリーは混乱しながらも食らいついてきてくれている。
そんな彼に一拍、考える間を置いた後。
エルヴィスは長めの息を吸い込み話を続けた。




