3-3「陶器の仮面」(4P)
「────と、いうか……、
そこまで『出せ』と言おうものなら、猛反発だろうな」
容易に考えられる『それ』に、エリックは吐き捨てるように言葉をこぼしていた。
『改革』・『新制度』などを進めようとした場合、どんなことでも『反発』は起こる。
女性の雇用を促した時もそう。
成人男性への研修を開いた時もそう。
婚姻制度を、見直した時もそう。
──『変化』が面倒なことなら──尚更だ。
エリックは、婚姻制度の見直しと改革を進めた際に食らった『男性の猛反発』を思い出しながら、言葉を続けた。
「…………もし、それをするのなら。
縫製組合だけではなく、組合全体に作業を促すことになる。
仮に実行したとして?
職人も商人も、怒るだろうな。
『俺たちに信用がないのか』『不正をしているというのか』と、毛皮の調査どころじゃなくなるだろう」
「……あぁ~、目に見えますねぇ。
特に飲食の精肉と、アルコール類の店主は大騒ぎしそうです。
あそこは店主の裁量に任せている部分が多いですし」
「…………だろうな」
「────私個人としても、それはご遠慮していただきたいところです。仮に暴動にならなかったとしても、どう考えても今より仕事が増」
「…………」
「おっ……と。失礼いたしました」
『スネーク』。
と言わんばかりに、ギロリと目を向けられて。
スネークはすまし顔のまま黙りこくった。
エリックは、スネークのこういうところが気に食わないのだ。
いつでも力半分。誠意・真剣などとは程遠い態度。
────能力がある分クビにはしないが、性格はとことん合わないと常々思っている。
エリックの視線、スネークの視線。
互いの視線がぶつかり合い、一瞬バチっと火花を散らしたが──
エリックは さっと、目を戻し口を開いた。
「……つまり。
そこから先は『内部からじゃないとわからない』か……」
「例の『おあつらえ向き』は、使えそうですか?」
「ああ。」
「ほう? どこのどなたです?」
「言う必要はない。
それで。
────……俺が漏らすとでも思ってるのか?」
スネークの一言に、今日、一番。
低く、刺々しく言葉を返した。
明らかなる怒気を滲ませるエリックだが、ピリつく空気に笑みさえ浮かべるヤツに口の端がゆがむ。




