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8-12(8章完)「……幸せお兄さんかもしれない……」(2P)





 ど正直な意見にエルヴィスが瞬発的に返したのは、怪訝と不機嫌と怒気。何も知らないヘンリーにそれを返すのは理不尽にもほどがあるのはわかっているのだが、瞬間的に出た苛立ちはそのまま、彼の口を突いて出て行ってしまったのである。



 確かに、ミリアの『しあわせおにーさん』という名づけセンスは、当時彼も(なんだそれ)と思ったし、いまいち緊張感に欠ける。



 それは認めるのだが、まるで自分の相棒を貶されたかのようで腹立たしい。『自分が突っ込みを入れる分にはいいが、他者に言われるとムカつく』というやつである。



 ──しかし。


 いまそこを突いている場合ではないのだ。

 直立待機しているヘンリーを横目で流して、エルヴィスは腕を組み苛立ちを細い息に逃がした。



 瞬間滅殺してしまったが、元はエルヴィスもヘンリーと同じ感想を抱いたのだから──、これは、自分のエゴだ。


 瞬時、当たってしまったことを反省しつつ。

 エルヴィスは気分を変えるように首を振ると、もう一度息を整えヘンリーに言う。



「……まあいい。『幸せお兄さん』は、ウエストエッジに現れる『幸せについて問いかけてくる配布員』のことだ」

「……は、はあ……?」



 ヘンリーは引きつっている。

 (だろうな)と胸の内で呟く。

 しかし、それは黙殺し、エルヴィスは真面目を崩さずに続けた。



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