8-11「ボア・ドミニオンは知っているか?」
「ヘンリー。お前、ボア・ドミニオンの存在は知っているか?」
「ボア・ドミニオンですか?」
※
「……いや~……ちょっとジブンはわかんないっすね……」
問いかけの後。
返ってきたのは、ヘンリーの悩まし気な声と戸惑いの表情だった。
自分にツテがない分、ランベルトの知識を借りようとしたが、当てが外れたようである。
「……そうか」と小さく答え俯き考えるエルヴィスの前、それでも何とかひねり出そうとしている様子のヘンリーは、難しそうに後ろ頭をごりごりと掻くと、
「ウチ、ほら、兵装具は詳しいんすけど……」
「ああそうか。御父上のランベルトは鎧の収集家だったな」
「そーなんすよ~。おかげさまで廊下も部屋もいかついのなんの。母上も文句言わないもんですから、増えていくばっかりですよ」
身振り手振り、大げさに手を広げ肩をすくめるヘンリー。
確かにそうだ。
彼の実家は物々しい。
数回訪ねたことがあるが、下手な拠点城よりよほど装備が揃っている印象である。
そこからイモずる式に、ランベルトの奥方の趣味まで思い出し(では、毛皮関係は望み薄……か)と内部整理及び次なる手を思案するエルヴィスに、ヘンリーの問いが飛んだ。
「けれども閣下、なんでそんなことを?」
「別件で少し」
「ああ、この前のミリアさんでしたっけ? あの子関係ですか?」
「──なぜ?」
「あれ? 違うんですか? ミリアさん「仕事仲間だ」って言ってたから、ピンと来たんですけど」
「…………」




