8-10「密談は小型竜《ワイバーン》と共に」(2P)
「……円卓会議の後だ。各諸侯も、その付き人もうろついている。どこで誰に聞かれているかわからないからな」
「……まあ……確かにそうではありますけど……」
いまだ、警戒するように辺りに視線を配るエルヴィスに息を吐く。
────わからない。
『話がある』と言われた時、会議室やそれらに引っ張られていくものだと思ったが、こんなところに連れて来た盟主の真意が。
それをそのまま口に出す。
あくまでもひょうきんな声色は保ちつつ、しかし少し訝し気に。
「だからって小型竜竜舎で話しますぅ? 閣下、ちょっと発想が突飛になったんじゃないですか?」
「……そうか? 音を隠すのには丁度いいだろう?」
「前の閣下なら、堂々人払いされていたと思うんですがね……」
「内密に話していたことすら気づかれたくない。ここなら二人で小型竜の手入れをしているようにしか見えんだろう」
怪しんでいる自分を一蹴。
澄ました顔のまま、エルヴィスは隣の小型竜へと移動し、乳白色の鱗を撫で始めるのだ。
その表情はやはり彫刻のようで、ヘンリーの中、ミリアの『良く笑うと思うんですけど』はますます疑念に染まりゆくのである。
(……やーっぱり彫刻だって。何言ってんだ、あの娘は)
──と、変人扱いするヘンリーだが──
しかし。
確かに、微細な変化は見て取れるのだ。




