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8-9「本業なのは解っちゃいるが、出たくないったら出たくない。会議なんて億劫だ」(9P)


 突如大きく響いた声に顔を上げた。

 瞬時我に返り、何があったのかと目を白黒させるエリックに追い打ちをかけるよう、ヘンリーは困惑顔で口を開くと、




「どうしたはこっちのセリフですよ、どうされたんです? ぼーっとして」

「……ああ、いや。……少し、考えていた。お前の言うように、『人生は一度きりだ』」

「……は、はあ……?」



 ごく真剣に答えたつもりだったが、ヘンリーから返ってきたのはおかしなものを見るような顔。



 ──確かに突拍子がなかった。

 それは自分でもわかっている。

 

 そも、ヘンリーにこんなことを漏らすのも『異変』だ。臣下にこのようなことを言うべきではないし、らしくないのも────解っている。


 

 

 しかし自分は決めたのだ。

 少しずつ変わって行こうと。

 

 ミリアが示してくれた、『自分の周りにある光』。

 ──それを再び無きものとして扱うか、気づき大切に育てていくかは──自分次第だ。



 それらを心の芯に添えて。

 すぅっと息を吸い込んだ時、迷いながらの声は、ヘンリーからおずおずと投げられた。




「……あ~っと、それで、閣下? 会議はどうだったんです?」

「どうもこうもない。いつも通り、だが……」

 


 すっと切り替え言葉を探す。

 

 今、『いつもの通りだ。内容については議事録を確認してくれ』と言いかけたが──違う。



 次を待つヘンリーの向こう側で、記憶の中のミリアが言う。

 


 『お役に立ちたいって言ってたよ』

 『あんなこと言ってくれる人、いないと思うよ』

 『仕事、任せてあげなよ、ヘンリーさん喜ぶよ』



 踏み出すなら、()

 言い方も、頼み方も、タイミングも模索中だが、差し出された手を掴むなら、今だ。



「……ヘンリー、少し時間を作れるか。折り入って話しておきたいことがある」


 


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