8-9「出たくないったら出たくない」(7P)
「……済まない、ドミニク殿。騒がせたな」
「いえいえ。滅相もない。では閣下、ドミニクはこれにて失礼いたします。近日中の相席、心待ちにしております!」
慌てて首を振り、恭しく貴族の礼を送ったドミニクは、目にもとまらぬ速さでそそくさと踵を返し、廊下の向こうへ消えて行ってしまった。
──残されたのは、勝手に会食の約束(?)を投げつけられたエルヴィスと──両腕を後ろ頭に、ぽかーんと見送るヘンリーの二名である。
「……あれ? ドミニクさんと会食ですか? いーなあ」
「……約束などしていない。していないが、ねじ込んでくるつもりだ。ドミニク殿は」
去りゆくドミニクの背を見つめながら、エリックは疲れたトーンで首を振った。
”やられた”。
会食云々の話が出る前に退散したかったが、最後の最後にねじ込まれて頭が痛い。こんなものは約束のうちに入らないが、きっと近日中に手紙が来るだろう。
「ねじ込むって、え?」
「ああ、招待状が来る。『我が家で会食を』とな」
「……うゎあ……そのたびにドミニク領まで行くんですか……」
「代わってやるぞ、ヘンリー。ドミニク殿はレアル嬢の婚姻相手確保に必死だ。名乗り出たらどうだ」
明らかに引いているヘンリーに、うんざりを込めて言って退けた。
失礼なことを口走っている自覚があったが、そう言いたくなるほどドミニク家のプッシュにはうんざりしているのだ。
ヘンリーに押し付けるわけではないが、自分が娶るのは絶対に嫌だ。
しかしヘンリーは、そんな提案(押し付け)に首を振ると、きりりとした顔で、




