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8-9「「出たくないったら出たくない。ああだるい、帰りたい」」(2P)




 ロフマンがオリオン領の『婦女子死亡事件』について言及したのだ。


 何を思ったのか『先代のオリバーさまでは起こり得ない失態・責任を取られては?』と、エルヴィスのつるし上げにかかったのである。



 他領主からすれば『オリバーは戦争援助でいくつの血を流したと思ってるんだ』の一言に尽きたのだが、年寄りロフマンの話の焦点はそこではない。


 

  『やはり若くて力のあるエルヴィス(坊主)が気に食わない』『若造に国を任せられん』『親の資産に胡坐をかいている若造になぁぁぁにが出来る』




 ──と、酒でも煽ったかのように宣い、オリオン派の重鎮・レギュラスの怒りを買ったのだ。




 そうなるともう、事態はカオスである。

 いくらエルヴィスが制しても、重鎮レギュラスは怒りの矛を収めないし、ロフマンは頑固じじいを絵にかいた(さま)でそこに居据わっている。



 エルヴィス本人が怒るなど以ての外だ。

 言及されている側が感情的になっては、後は争う他道はない。


 

 こうなった場合に緩衝材になるのはヘンリーの父・ランベルトの役割だったが、本日彼は不在。そんな修羅舞うこの会議で、一番災難だったのは──エルトキアの代理で来たドミニク男爵であった。



 そう。

 エルヴィスに散々色気を仕掛けている娘・レアルの父・ドミニク男爵である。人体臓物収集家の娘レアルのためなら希少人種の瞳も買い付ける、あのドミニクだ。



 男爵の立場で会議に引っ張り出されるのは通常、有り得ないことだが──、彼はエルトキア領の主・フレデリックと旧知の仲。『どうしても!』と頼み込まれて巻き込まれたらしい。哀れな男である。



 加えてドミニクは、年齢的にロフマン寄りの年長者。

 世代くくりで仲間認定したロフマンに、同意を求められまくっていた。



 しかし。

 傍から見れば哀れすぎる役回りだが、年の功というべきか──ドミニクは上手かった。



 先代オリバーの思い出話も交えながら、徐々にロフマンの牙を抜き『まあまあ、我々も年を取りましたなあ』と落ち着かせた手腕には、エルヴィスはじめ他の貴族も目を張ったものである。




 かくして。

 エルヴィスのストレス素『ノースブルク諸侯同盟円卓会議』は、なんとか平穏な着地で終わりを迎えたのだった。





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