3-3「陶器の仮面」(1P)
エリック・マーティンは笑わない。
ターゲットに近づくために微笑むことはしても
噴出して笑うようなことはしないし
その表情が柔らかく綻ぶこともない
ウエストエッジ・総合ギルド組長のスネークは言う。
『顔に陶器を張り付けた様な人だ』と。
ミリアが、父の手紙にキレ散らかしているころ。
エルヴィス・ディン・オリオン──いや、
エリック・マーティンは、朝からギルド最奥の部屋に詰めていた。
──その機嫌、最悪。
先日の、ドミニクとレアルとの会食が最低だったせいである。
『生首が見守る環境で食事を摂る』のもげんなりするというのに、結局あの日は、レアル嬢の話のネタにもならない話を延々と聞かされて。
ドミニクから見えすいた『よいしょ』をされ続け。
本来接待を受ける側なのだが、まるっきり接待をしてきたようなものであった。
何よりげんなりしたのは、解放された時間である。
彼の見積もりを大幅にすぎ、屋敷についた頃にはどっぷりと日が暮れていた。
それらを巻き返すために、帰宅後
彼が雑務を必死で片付けたことは言うまでもない。
それを、うまく切り替えられぬままの『今日』
エリックは自分の怒りをまき散らすタイプではないが、いくら隠そうとも、にじみ出てしまうオーラと圧力は隠せるものではなかった。
普段から笑わず、厳しい顔つきで務める盟主の
機嫌が最高に悪い時
新入りは気迫に押されて、物言わぬ置物になる。
中堅でさえ、意見をするのに躊躇する。
そんな中、臆することもなくモノを言えるのは、あの男。総合ギルド組長 スネーク・ケラーぐらいなものだった。
「──ボス、毛皮の件ですが」
「…………ああ」
潰れた酒屋を改装した・ギルドの最奥。
天井から吊られ下げられた『魔具 ラタン』が、明かりの入らぬ室内を煌々と照らす中。
テーブルをはさんで、男二人。
そこそこ質のいい椅子に掛けることはせず、互いの間を読みながら。
いつもより低い声で端的に答えるエリックに、スネークは澄まし顔で資料を差し出すと、




