8-7「おにーさん、わたし旦那さまのことを聞いている」(2P)
「ねえ、じゃあ、(服飾に興味のない旦那さまは)何が好きなの?」
「え? 好きなもの? ……あー、魔具、とか?」
「まぐ。」
「……魔具……、うん。魔具は好きだな。そこは、間違いないと思うよ」
その、少々迷いながら──ふわふわとした答えに、ミリアが(人様の好きなものって確かに断言できないかも?)と思う中、彼は流れるように口を開くと、
「──ああ。あの家はもともと、武器商人の成り上がりだから。小さなころから武器兵器に囲まれて育ったんだ」
「へえ……」
口調は、ふわふわからややしっかりとしたものへ。
その表層に、微妙に浮き出ている焦りの色は、きっとミリアの気のせいだろう。
「武器。へえ~そうなんだ? それって小さいのも? ちっちゃいのあるよね?」
「まあ、うん。むしろ日用雑貨化として小型化したものの方が好きかな。軍事用はいかついが、それはそれで味がある」
「あじ。」
「──フ! わからないか、あの武骨なかっこよさは」
……語るエリックは、まるで自分のことのようで。
ちょっぴり疑問に思いつつも、ミリアは不思議そうにぽつぽつと、
「……魔法のない地域で便利道具なのはわかるけど……。カッコいいとかちょっとわかんない……」
「いや。カッコいいよ。あの性能・あの形状。重厚かつ艶めかしく、からくりのようでいて、そうではない……どうしたって惹かれるよ。動力源が魔術というところも魅力的だが、特筆すべきはやはり、機能性と耐久性を備えたその造りだ。やっぱり……カッコいい」
「じゃあそこ、旦那さまと気が合うんだね?
おにーさんも好きだもんね?
シャルメ、よく見てるしね?」
「──えっ?
……あ、ああ、
うん。
そう。
よく話してくださるよ」
「へえ~♫
お仕えしてる人と趣味が同じっていいよね~、わかるぅ~」
「……ああ。うん、まあ」
「……?」
(……? 全力で拾ってみたんだんだけど……?? あれ……? なんか、おにーさんぎこちない……??)
上手く会話を繋げてみたつもりだったが、返ってきた居心地の悪そうな相槌に、ミリアはぐりんと首を捻った。
どーもおかしい。




