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8-7「おにーさん、わたし旦那さまのことを聞いている」(1P)
「……??」
串焼き・ピチューボの、がらんとした店内で。
痛烈な面持ちで頭を押さえ、首を振るエリックに、ミリアは心底。
心底首を傾げていた。
(……わたし今、なんか、おにーさんが困るようなこと聞いただろーか……?)
丸テーブルの隅、いつのまにか配膳されていたアイスティーをそっと互いの前にずらして観察する。
いましがたの出来事をさらっと思い返してみるが『お金ないハズのにたくさん頼んだね、このおにーさん。』ぐらいしか思い当たらなかった。
(でも、わたしそれでおにーさんに怒ったりしてないし……? お金ないのは仕方ないし……??)
──と。
エリックが『重ねた嘘に自分が巻かれて自爆しどうしようもない状態にある』なんて糸くずほども思わぬ彼女は、アイスティーをひと口。
ズレにズレまくった観点から彼の空気を換えようと、前のめりで問いかけるのだ。




