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8-6「始まりの”ピチューボ”で」(7P)



「オーダーを頼む。

 鶏の串焼き、ほっこり野菜の炒め物、若鶏のソテー・ココテリア風と、ハーブ香るチキンレッグ。フライチキンサラダをひとつずつ。……それとアイスティーをふたつ」

「けっこーたべるね~……!? うわあ」

「うん? まあね、男だから」 




 品数の多さに目を丸めたミリアに、エリックはしれっと答えメニューを返し、緩やかに指を組んだ。



 ──ぶっちゃけ。

 いくら男でも、そこまで(・・・・)入る(・・)わけがない(・・・・・)。思惑あってのことであるが、それを口には出さず余裕を決め込むエリックの、視界の奥の方で。



 厨房で店主が動き出す。

 途端、”コンコン・カチャカチャ”という音が響き、漂い始めたハーブの匂い。



 途端、ごくんと喉を鳴らすミリア。

 顔に『すんごくお腹空いた』と書いてあるのだが、気づかれないとでも思っているのだろう。


 彼女は、組んだ両腕をテーブルに置き、ふと瞳をさまよわせながら思い出すように口を開く。



「でも~、『非公認の品評会(そういうのがある)』って、おにーさんが知ってたなら、どうして今まで言わなかったの?」

「……旦那様は、服飾宝飾関係にあまり詳しくないんだ」





 

 痛いところを突かれ、エリックは首裏を押さえ困惑を滲ませた。

 地味にそこは、彼の弱点であったからだ。



 『女神のクローゼットと異名ある街を治めていながら、服飾関係に詳しくない』など、ふさわしくないにもほどがある。



 しかもそれを、()

 彼は『他人を装い言い訳している』状態にある。

 正直ぶっちゃけかっこ悪いことこの上ない。



 だがしかし、彼も人間だ。

 どうしたって興味の濃淡は出てしまうし、興味のないことは抜け落ちてしまいがち。


 女神のクローゼット・ウエストエッジの盟主としても、スパイのボスとしても、本来ならば常に服飾関係の情報を集めるべきなのは理解しているのだが、どうしても貴族や富裕層の動向や魔具の方に傾いてしまう。


 それはもう仕方ないだろとは思いつつ、あまりダサいところは見せたくないのが、男心である。




 エリックが内心、(正直これ以上突っ込まないでくれ)と願う中、返ってきたのは「あぁ~、なるほどぉー、」という緩い相槌と、ミリアが椅子の背に体を預けた小さな音だった。



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