3-2「三年ぶり二度目の結婚生活がスタート」(5P)
彼女の年齢は24。
確かに、結婚ラッシュではあるし、マジェラでは遅い方になる。
マジェラの出産早い。
17で子供を産む人もいるぐらいである。
適齢期は22。
彼女はもう、24だ。
そんな環境にいる親の言い分はもっともだろう。
故郷では本当に『ラッシュ』なのだろうから。
しかしミリアはそんなことを知らなかった。
5年も前に国を出ているし、ここでは『そう』じゃない。
彼女にとって見える範囲で『そう』じゃなければ、彼女の世界で『そう』じゃないのである。
しかし、その認識の違いは────
ミリアと親の間で、埋まることはないだろう。
そして彼女自身は、結婚に対して焦りなどもなかった。
一人で生きていくのには苦労していないし、別に恋人が欲しいとも思っていない。
そもそもミリアは
『自分がこの国で結婚できる』などと、思っては、いないのだ。
「…………いーもん。
こっちは晩婚化が進んでるんだもん」
先日、エリックから聞いた『問題』を、自己正当に使う。
しかし次の瞬間
(あヤッベ、あのお兄さんに聞かれたら怒られるやつ)
と薄目がちに宙を見つめるが、次の瞬間
(────いないからヨシ!)と正当化する。
「………………ふう…………」
こぼれるため息、ぼんやりと
彼女はまた、ガラスを打つ雨を眺めはじめた。
朝から降り注ぐ雨は、まだまだ止む気配がなく
ビスティーの外はどんよりと暗く、灰色の世界が広がっていて────
(────けっこん、ねーーー……)
物憂げに。
しかし、やる気のない顔で。
ミリアは息をつき、そして何気なく目を泳がせ、
「……ん?」
ふと。
視界の隅。彼女の手元。
抜け殻になったはずの封筒が目に留まり、声が漏れた。
(……まだなんか入ってる?)
封筒と同じ、薄い桃色。
手紙より少し小さなそのカードが目について、自然と手が伸びる。
(────カード?)
装飾の施された薄桃色のカード。
少し厚手のソレを、引き抜きくるりと裏返し──




