8-6「始まりの”ピチューボ”で」(4P)
「……しらなかったなぁ~『セレブ御用達のボア・ドミニオン』。……縫製ギルドと服飾業界公認の他に、そんなものがあったなんて……」
「────珍しいことでもないさ」
脳内のシャトワールに続く言葉に、意外と言わんばかりに息をつくミリアに対して、エリックは冷めた様子で椅子に背を預けた。
そのまま流れるように店主の様子を目くばせで伺ったエリックは、続いて指を組み肘をついて、そこに顎を乗せると、冷めた口調で述べる。
「古来より、富裕層でそういった集会は度々行われていてね。大抵は自慢で終わるが、それが購買に繋がることもあるんだ」
「へえ……」
「奴らは持ち物を見せることに生きがいを感じている者も珍しくない。希少なもの・高価なものを集め見せびらかし、自分の財力および権力を示すんだよ」
「………………まあ。そうぞうはつくネ」
「だろ? そいつらの中には人体臓物の収集家なんかも居る。気味が悪くて仕方ないがな」
「………………………………う。」
「ああ……すまない、苦手だった? まあ、つまり纏めてしまえば『需要と供給?が存在している』ということ。馬鹿らしいが、それが現状だ」
「……」
淀みなく話し始めたエリックに、ミリアはメニューを握ったまま目くばせをした。




