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8-5「エルヴィスさまではありませんか???」



(……それを君の口から聞くのは複雑だ)



 なぜミリアの口から(他人の)『エルヴィス様にお目にかかりたいの』などという言葉を聞かねばならないのか。


 

 ミリアがそんな気を持っていないのは百も承知だし、なんなら”エルヴィス”は自分である。あるのだが、




 なんか(・・・)

 どうも(・・・)

 気に食わない(・・・・・・)



 (ミリアの口でそれを語るな)が胸を舞う。


 

 頭の冷静な部分が自分に呆れる。

 (些細な事だろう)と囁きが聞こえはするが、最近の彼は以前よりも少し、素直だった(・・・・・)





 ぶすっと不機嫌に腕を組み、呆れ眼でそっぽを向く。大人げないことはわかっちゃいるが、不快が溢れるもんは溢れるのだから仕方ない。



 エリックが頭の片隅で(いや、別に取られたわけではないだろう)と葛藤を育てる中。突如、軽く肩を叩かれ顔を上げた、


 探す様に巡らせた目の先、飛び込んできたのは、くすりと笑うミリアの顔。




「えるびすさま、罪深い人だね? おにーさんも大変ね?」

「……!」

(……勘弁してくれ、(とお)も離れているし、それを君から聞きたくない!)


 

 なんていうかもうカオスだ。


 

 全不満を瞳と腕組みに乗せ、力いっぱい訴える。

 解ってくれとは言わないが、無邪気な配慮が無神経だ。


 しかし、そんなエリックの内情を知る由もなく。

 ミリアは陽気にぱちんと手を叩くと、くるんとシャトワールに振り向き────



 言い放ってくれた。




「でも、シャトワールさま、大丈夫! このおにーさんで慣れていきましょ!」




(────────────────はっ?)





「だいじょうぶ大丈夫、このおにーさん、女性の扱いは慣れてますから! きっと克服できるはずです! れんしゅうれんしゅ」

「────ミリア」

「はいっ?」

「…………勘弁してくれ」



 やたらと陽気に「がんばろー!」と述べるミリアの肩を握って。


 勢い良く振り向いた彼女にエリックは、固く神妙な顔つきで、絞り出すような声を出したのであった……










「──はあ~、とりあえず進展ってことでいいのかなー?」

「……まあ、『潜入の甲斐はあった』、ということでいいだろ。……失ったものも大きい気がするがな……」

「なにを? なんか取られたっけ? カバンはおにーさんが取り返してくれたじゃん?」



 エドモンド伯爵邸からの帰り道。

 やや雑多なピコック通りを行きながら、渋さを押し出すエリックに、ミリアはきょとんと首を傾げた。




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