8-5「エルヴィスさまではありませんか???」(7P)
シャトワールに事情があるのは重々承知してるが、『他人とのコミュニケーション』という最も基礎な部分で負担を強いられている相棒を目の当たりにするのは、気分のいいものじゃない。
はじめは『難儀なものだな』とささやかに同情までしたものだが、こうも迷惑をかけられては話が違ってくる。
(…………いい加減にしろよ? 箱入り娘なのは理解するが、人の相棒を何だと思ってるんだ。お前の代理人じゃないだろ)
むすっとする。
要約すれば 『人様の相棒になにしてくれてんだ』と靄を育てているのだ。独占欲である。
しかし、そこに気づかぬエリックの前。
すっかり代弁者となったミリアはエリックに向き直ると、胸の前でぎゅっと指を組み、恋焦がれた娘のような顔つきで明後日の方向を見つめて────述べる。
「『……けれど、忘れられないのです。記憶違いと言われても、シャルルにとって、あれはエルヴィス様でした……! いつか男性前あがり症を克服して、お目にかかりたいのです……! おほっおほほほ!』だそうです~」
「………………」
ミリアの口から放たれたそれに、エリックは黙り込んでいた。
なんというか……複雑だ。
シャトワールの気持ちを惹いていたなど寝耳に水だし、彼女は成人したばかりの小娘である。
(十も年の離れた子どもに好意を抱かれても)が本心であるし、こんな手のかかりそうな少女と必要以上に関わりたいとも思えない。
なによりシャトワールは貴族令嬢だ。
ひとつ踏み込めば、しがらみ以上のものが噴き出してくるのが目に見えている。
しかしそれよりも彼を支配しているのは、




