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8-5「エルヴィスさまではありませんか???」(6P)
「『……で、ですわ……ね……、そうですわね、ほほほほほ』だって」
………………はふ………………
耳に届いたその言葉に、エリックは解き放たれたかのように息を吐いた。
危機一髪だ。
助かった。
やっと呼吸ができる気分だ。
冷静を取り戻した脳が、瞳がミリアを求める。
(実に鮮やかだった。……本当に助かった)
信じてくれているから、疑わなかった。
信じてくれているから、言葉に何の含みもなかった。
含みのない人間の説得は、嘘を本当にする。
──それが、今の彼には心強かった。
しかしながら、結果、ミリアに知らず知らずのうちにシャトワールを騙す手伝いをさせてしまったことは小さな傷だ。
そんな罪悪感を感じつつも、気を取り直そうとした、そのとき——
「うげっ」
「?」
妙に苦しそうな声が届いて振り向いた。
目に入ったのは、後ろに数歩よろめくミリアと、ミリアの肩を掴み囁き始めるシャトワールの姿。
…………どうやら、またフィルターとして使われているようである。
(…………おい。ちょっと)
その様子に湧き出る”シンプルな不快”。




