8-5「エルヴィスさまではありませんか???」(4P)
16の自分を今恨む。
あの頃の自分は、盟主という立場である自分にほいほいと寄ってくる女どもに気色悪ささえ感じ、嫌悪と軽蔑を交えた口説き文句で相手を転がすことに精を出していた。
そんな中、まだ純真な幼子・シャトワールには社交界の貴公子して振舞ったのだが、それが10年の時を経て自分の首を絞めかけるとは。
「『そ、そうだったかしら』」と迷うシャトワール。
(このまま騙されろ)と祈るエリック。
握る掌が汗ばむ。
乱れそうになる呼吸を深呼吸で整える。
そんなエリックにシャトワールは、ミリアの顔で問いかける。
「『まあ、では、そのお方のお名前は……?』」
「ラインハルトと言いますが、すでに屋敷を出ておりまして」
「『…………そんな…………!』」
(…………!)
苦し紛れの嘘にミリアの悲痛な反応が返ってきて、エリックの心が動揺に揺れた。
ミリアはそれを代弁しているだけとわかっていながら、どうにも悲しそうな様子が刺さって痛い。
笑顔の下で複雑が絡まる。
どうにもこうにも、雁字搦めのような窮屈さが彼渦を巻いて仕方ない。
眉を下げ悲しそうな顔をするミリアに、つい本当のことを言いたくなるが、シャトワールのそれを認めるわけにはいかない。演技だと解っているのに、まともに痛い。
痛い理由もわからない。
一人でパニックである。
しかしここは、なんとしてもしらを切らねばならない。
バレるわけにはいかない。
彼女との時間を今のまま楽しみたいのだ。
──そう、無意識のうちに今を護ろうとする彼の前。
混乱をもたらしたシャトワール(の表情を伝えるミリア)は、くねりと物憂げに頬に手を当てると、




