8-5「エルヴィスさまではありませんか???」(2P)
「えーと、えーと、繰り返すね?
『シャルルは、幼き頃にお会いできたあの日から、ずっとエルヴィス様を思い描いておりましたのよ……? 間違うはずありませんの! 沢山遊んでくださったわ! あの方はエルヴィス様です!』だそーです、けど…………」
「────ああ、なるほど、それで」
口調をまねて伝えるミリアに。
エリックは、極力落ち着き払った声と雰囲気を捻じりだして切り返した。
内心まだ焦りまくっているが、勝ち筋は見えた。
シャトワールのそれはやはり「幼い記憶」。あの日、あの昼、あの場所で。それ以外の出来事を述べているのではなく、はるか昔の記憶を述べているだけ。
ならば、嘘で巻くのは容易いと踏んだのだ。
そもそも人の記憶はあいまいだ。
思い込みや誤認でどうとでも変化する。
幼いころのものなら霞や幻のような明度だし、いくらシャトワールが力説したところで、ミリアが自分を盟主だと紐づけることはないだろう。
それさえわかれば、あとは簡単。
いつも通り、事実を交えて捲くだけだ。
とりあえず全容を把握したエリックは、ミリア越しのシャトワールに、「付き人」の笑顔を湛えると、貴公子を装い言い放った。




