8-4「本家は爪を隠すもの」(10P)
「……シャトワール殿。ミリアから手を離していただけませんか? 彼女が苦しそうだ」
ぎゅう……!
相棒の解放を願う自分に、しかし、シャトワールは彼女の服を引く。瞬間、苦しそうに歪むミリアの顔、そこに顔を近づけるシャトワール。
「.......,......! .......,......!」
「うっ、しゃ、しゃとわーるさま、あの、え? なんですか?」
苦しそうなミリア。
必死な様子のシャトワール。
手出しのできない状況に、ひとり歯がゆく口を閉ざす彼の前、それは、唐突に訪れた。
「.......,......!」
「もう少し声張ってください~っ、声聞こえないです~っ!」
「.......,......! ......,......!」」
「────え?」
声を上げ、目を丸めるミリアの瞳がエリックを射る。
その、驚きを宿したはちみつ色の瞳に釣られて自然と目を丸めた時。
「その名」は、ミリアの口から放たれたのである。
「────『エルヴィスさま』?」
(────は?)
心臓が跳ねた。
まるで喉まで届きそうな勢いで脈打つ。
どうしてその名を──とっさに全身が強ばる自分を置き去りに、ミリアは言うのだ。
「えっ? 「エルヴィスさまではありませんか?」って???
えっ? おにーさんが?
…………えっ?」
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