8-4「本家は爪を隠すもの」(8P)
「……そう~……、だから、恥かしくてお話しできないんだって。これで精いっぱいなんだって」
「…………」
かくかくしかじか。
シャトワールの事情を話し終え、困った様子で頬を掻くミリアに、エリックは納得をかみ砕き考えた。
エドモンド伯爵が男性を遠ざけるのは、彼自身が『家族を守るために男を屋敷に入れるのを嫌っている』と認識していた。
非常に家族愛と警戒心が強い人だと。
しかしどうやら、微妙に違ったようである。
ミリア(シャトワール)の話を解釈するのなら、娘の快適を最優先しての行動だと推測ができる。確かに、『屋敷に男がいるだけで、娘が緊張しっぱなし』なのであれば、自分もそうするかもしれない。
(……まだ娘なんていないけどな)
そう心の中で眉をくねらせるエリックは、存在する予定もない娘との将来を脳の隅にスライドし、ミリアに目を向け話し出す。
「……なるほど、それでエドモンド伯が男を遠ざけていたのか……、合点が行ったよ」
「う、うんっ」
慎重に述べるエリックの前、ミリアはとても困っている様子だ。
懸命に首周りを確保している。
後ろにいるシャトワールに思いっきり服を引っ張られているのだ。
シャトワールの事情は理解したが、その光景は、エリックにとってやや複雑なものに映った。
──しかし、今彼が取るべき行動は、怪訝を露わにすることでもなく、不快を滲ませることでもなく、シャトワールへの謝罪である。
姿を偽り彼女を騙したことを、謝らなければならない。




