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8-4「本家は爪を隠すもの」(6P)







「──ミリア!」

「あ、おにーさん!」



 荷物を抱え、彼は戻ってきた。





 道幅の狭いザターナ通り、駆け出した辺りに戻ってみれば、そこで待つのはいつもの彼女。遠目からかけた声に、ミリアの弾かれたような声が返ってきて、思わず安堵がこぼれる。



 ベンチにかけているシャトワール。

 駆けよってくるミリア。

 ああ、良かった、無事なようである。


 そんな様子を視界の中心に、一層足早に駆け寄るエリックの口から、言葉は勢いよく飛び出していた。



「怪我はなかったか?」

「怪我、なかった?」

「「──えっ」」



 見事にハモったお互いの声掛け。

 互いに目を見開き驚いて、漂うそこはかとないむず痒さ。

 しかしそれらを一瞬で納め、素早く肩をすくめて軽口で反応したのはミリアの方だった。

 


「わたし? わたしは無いよ、シャトワールさまと一緒に居ただけだし……、それより、おにーさんこそ大丈夫? 無理してないよね?」

「俺? 俺は、この通りだ。どこか怪我をしているように見える?」


「…………見えない。そっか、良かった~、ケガしてたらどうしようって思ってた~」

「…………」



 胸をなでおろし、くるんと(きびす)を返すミリアに、一瞬(・・)


 ゆるゆるとした彼女の背中に、瞳を惑わせ、深刻をたたえて、声をかけた。

 


「ミリア、実は…………」



 振り向くミリアに向けるのは痛々しそうな顔。

 眉を下げ、憂いを湛え、みぞおちのあたりを押さえながら──言う。


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