8-4「本家は爪を隠すもの」(3P)
「うおおおお! 本部の方に会えるなんてオレサマラッキーだぜぇ!
おいこれ! 見てくれよ、能天気にふらふら歩いてやがった貴族から戴いたのさ!
はっはー、間抜けだねえ!
盗ってくださいっつってるようなもんだぜぇ!」
これ見よがしとシャトワールの荷物を見せるジャイルは、「ああ、そうか」とほほ笑むエリックが含む苛立ちに気づかない。
「アンタにも見てもらいたかったぜえ~! オレサマの見事な手さばき、上がる悲鳴! キャー!」
(──見ていた。三流以下だった。どこが見事だ。教育し直してやろうか)
「やたらと足の速いやつに追われた時は焦ったもんだが、ふわっはっはははは! このジャイル様を舐めて貰っちゃあ困んのよッ!」
「──……そうかそうか。では、その荷物を預かろう。エージェント・ジャイル」
「え! なんでだよ!?」
苛立ちと焦りを押さえつけ、にこやかに述べたエリックに声が跳ね返る。その反応はごもっともだが、こいつは何を自分の所有物のように話しているのだろう。
(なんでもクソもない。それはシャトワールのものだ)
──を、喉の奥底に、エリックは余裕の微笑みを湛えジャイルに述べる。




