8-4「本家は爪を隠すもの」(2P)
闇に紛れて様子を伺うエリックの視線の先、窃盗犯はというと、興奮を隠さず荷物を掲げると、誰も居ない空間に向かって口を開くのだ。
「へっへっへ! これでボスもオレサマに一目置くに違いねえ!」
「ああ、そうだな。ボスもお喜びだろう」
(──無駄な口上だ。さっさと済ませるか)
「…………誰でい!?」
ぐるんと振り返る野党に、嗤いで口がゆがむ。
まるっきり茶番だ。
三流以下である。
呆れた笑いも出そうになるが、それを堪えて彼はゆっくりと闇から歩み出ると、
「俺だよ、俺。……まあ、分からなくても無理はないか。普段任務に就いていて……、本部に顔を出せていないからな」
「──アンタ、本部の人か!」
ジャイルが目の色を変えたが──
──もちろん嘘である。
こいつがどの組織に所属しているかなど知る由もないし、全てでっち上げだ。
そもそもエリック──いや、エルヴィスはそれを潰す側だ。
昨今、潰しても潰しても沸いてくる賊どもの情報が得られるのなら、味方のふりをして話を運ぶのが、一番穏便かつ手早く済むと考えた。
(こいつが単独犯なら話は別だったが……な。
いっそ、根こそぎ吐いてもらうぞ)
と、大局的な思惑を、一度隅に転がして。
エリックはちらりと荷物に目を配る。
奴の腕の中にあるシャトワールの荷物は無事なようだ。
あの形のまま取り戻してしまいたい。
早く片づけたかった。
何しろあの場に、あの二人を置き去りにしてきてしまったのだ。
相棒のミリアと、エドモンド伯爵の娘・シャトワール。どこからどんなトラブルに発展するか、予想など出来たものではない。
(一刻も早く戻らねば)。
逸る気持ちを抑えるエリックの前、ジャイルは興奮を抑えきれぬ様子で息を巻くと、




