8-3「お・そ・い〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰……!」(8P)
気遣いから、一変。
ズバリ問われて、ミリアは言葉を詰まらせた。
たしかに、それを問われても仕方ない。
エリックは女装までしてエドモンドの家に入り込んでいる。
むしろそれを真っ先に聞かれなかったのが奇跡であるが、もう執行猶予はないらしい。
「えーっとえーっと、それには事情がありまして!」
一瞬、凝縮された思考が絡まり合い、飛び出したのは『信憑性もない間に合わせの言葉』。すぐさま切り込まれてもおかしくない、ぺらぺらの返ししか出てこない。
瞬時にエリックが喋る。
『なんだよその切り替えし。もう少しあるだろう』『残念だよ、ミリア。君がこんなにポンコツだとは思わなかった。契約は破棄だ。さようなら』。
(ああああああ、契約がああああああああああ!)
今にも飛び出そうな内部葛藤を押しつぶす彼女の前。
しかしシャトワールは、意気揚々と胸を鳴らすと、
「お゛ーっほっほっほっほっほ! わ゛か゛り゛ま゛し゛て゛よ゛! このエドモンド家嫡子・シャトワールへの気遣いと、あなたの護衛ですわね!? そうですのね!?」
「……ぇっ? ……あ、はい……」
都合よくそれっぽい発想をしてくれたシャトワールに、目を点にして相槌を入れていた。
大方その通りではあるのだが、ヒントもなしに、どこをどうしたらそんな閃きが出てくるのか謎で仕方ない。
通常なら「うちに忍び込んで何をしようとしていた!」と怒り狂うか怯えるかするのだが……シャトワールの発想はご都合主義ののんきな方だったようである。
そんな、力いっぱいめいっぱい、人の言うことを聞かず、自分の都合のいいように納得するシャトワールに。
ミリアは、全てを諦めた。
こんなもんどうしろってんだ。




