8-3「お・そ・い〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰……!」(7P)
虚空を眺めて泣き言である。
正直もう帰りたかった。
脳の中、涙目の自分がゆらゆらと揺れ、地面にぺたりと落ちるところを想像し、若干よろめき頭を押さえる。
シャトワールはいまだ、せき込みながらも元気だし。
エリックが戻るまでここを離れるわけにも行かない。
仮に、エリックが戻ってきても、極度の男性前あがり症を持つシャトワールが、正常に働く保証はないに等しい。それでもひとりはつらい。
(……うう……、おにーさんに助け求めても無理なのは重々解ってるけど、でも、早く帰ってきて……ッ!)
と、心の中で強く重いながら。
ミリアはぐっと頬に力を入れると、気を入れ直してシャトワールに臨み──!
(……えっ?)
目の前の彼女に息を呑んだ。
突如丸まって肩を揺らしながらうずくまっているシャトワールに動揺が走る。
……ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ……!
ふ────ッ……!
「シャ、シャトワールさま!?」
覗き込めば苦しそうな顔。
咽こんで呼吸がままならないらしい。
「ご無理なさらない方が……!」
慌てて背中をさすり声をかけた。
こういう事態には慣れていない。
さきほどから、シャトワールが咽こむのは気になっていたのだが、こうも苦しそうにされるとどうしたらいいかわからない。しかし、そんなミリアに、シャトワールは”ぐぐぐっ”と音さえ立てながら体を起こすと、痰の絡んだ息のまま、
「ごほごほ、っぜぇぜぇ……! ふう──はあ!
ほーっほっほっほっほっほ! それでミリアさんっ!?」
「咽ながら高笑いするのやめましょう? ね? からだ、大事に」
「どうして我エドモンド家に、あのような面妖な恰好までして入り込んだのですか!?」
(うっ……!?)




