8-3「お・そ・い〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰……!」(4P)
──つらかった。
言葉を待つのがつらかった。
まどろっこしくてどうしようもない。
もともとミリアは、会話に対するテンポが速い質である。「ぽん!」と投げられたら「ぽぽん!」と返すスピードが心地よく、その点でエリックと大変相性が良い。
職業柄、どんなペースにも合わせられるが、心地いいのは早めの彼女にとって、これはヒトがナメクジと足並みを揃えるのと変わらないのだ。
ああ、じれったい。
『ミリア的・ゆっくりしゃべるお客様NO1のロベール夫人』をさらに上回るゆっくりさに、ミリアの中、内なる自分たちが騒ぎ始めるのである。
(さっきまで小型竜だったじゃん、シャトワールさまぁ! いきなりナメクジはないよ! 緩急エグいよ、風邪ひきそう!)
(でも事情はよくわかった。多分よく分かった! よくわかったんだけど、え? これ、話のペースずっとこのテンポ? つらい!)
(いつまでこのペースに合わせたらいいの? さっきのほうがいい! さっきの方が楽だよこれ……!?)
(──でもどっちもどっちって言えばどっちもどっちで~~~! あああもう、どうしたらいいのッ! おにーさん! おにーさんヘルプ! ──って駄目だ、おにーさんが来たらもっとややこしくなるかも……詰んだ!!)
憂いの顔つきで俯きシャトワールを視界の隅に、激しい激しい内部葛藤。
ミリアは、ひとり頭を抱えて苦悶の表情を浮かべ──────




