8-3「お・そ・い〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰……!」(2P)
「…………おしえて…………
…………ください…………
…………まし………………」
雑踏の行きかう通りのベンチ。座る自分に目線を合わせ、そこに跪くミリアに、ゆ──────……っくりと囁くシャトワール。
そのスピードに一瞬、(う……!?)と面を喰らうミリアの内情などもちろん気にもせず、とても、とても、ゆっくりと。聞き取りが困難な声で、青の瞳に涙を浮かべながら、シャトワールは、言う。
「…………あの…………
…………かた…………
…………は…………
…………男性…………
…………です…………
…………よね…………?」
「ええ、えーと、その、──そ、そうです、男の人です」
「…………お待ちに…………
…………なって…………?
…………本当に…………
…………あのう…………
…………殿方……………
…………なのですか……?」
(…………おそい…………)
たっぷりたっぷり間を取って。
繰り返し問うシャトワールに、ミリアは無表情で呟いた。
急転直下の変貌である。
瞬発的にミリアの中、(貴族階級って変な人多いけどさあ~~~!)と文句が駆け巡るが、それは黙殺。
ミリアはそれらを遥か彼方に追いやり、素早く困り顔を作ると、こくこく首を縦に振り、全力接客モードで口を開く。
「そうですよ~、ごめんなさい、ですから先ほど『騙していてごめんなさい』と申し上げたのでございまして……」
「…………きゃぅ…………!
…………シャルルぅ…………
…………消えて………………
…………しまいたい…………!」
「へ!? はいっ?」
ぷるぷるふるふると震えるシャトワールに素っ頓狂な声を上げた。
意味が分からない。
シャトワールの言動の前後が全く読めずに混乱する中、シャルルは、ちいさなお口を押えながら、か弱き令嬢を絵にかいたような素振りで俯くと、




