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8-2「──────地獄だ」(6P)
「た、高笑い解禁で、どうぞ!」
「おーっほっほっほっほっほ! その通りですのよ──ッ!! このエドモンド家嫡子・シャトワール! 今、言葉が詰まったように何も出てきませんでしたわッ!」
「そんなこと、ある──!? んですね! そっかあ!」
口から飛び出した突っ込みを、ミリアはそっこーで修正した。
こういう修正だけは一人前以上である。
伊達に、日々の接客で瞬発的に相手に合わせ褒め言葉を運んでいないのだ。
口先三寸・口八丁だけは自信があった。
──しかし。
(わ〰〰ん! 扱いづらい〰〰〰!)
こっそり一人で泣き言を言う。
本当ならエリックに頼りたいが、今は自分で頑張るしかない。
瞬時に泣き言を気合に切り替え、ミリアが眉を下げシャトワールに向き合った時。
──どんっ!
「────きゃんッ!」
突き飛ばす音。
よろめくシャトワールの悲鳴。
「ひったくり!? 「ひったくり」!」
シャトワールを支え、慌てて繰り返すミリア。
「────チッ! 下衆が!」




