8-2「──────地獄だ」(2P)
屋敷に訪問中、お目付け役の制止も聞かず、『やたらと背丈のある付き人』が気になって仕方ないシャトワールに高笑いと勢いで絡まれまくったのだ。
その様子はまるで、蛇に絡まれるカエルのようで、ミリアが思わずフォローに入るほど。
やたらと甲高い声で絡まれまくり、困るエリックに、『シャトワールさん、彼女にあまり話しかけないであげてください。エリーナ(エリック)はお喋りができないんです……』という、憐れみ100%の嘘八百をかましてくれたおかげで、無事(?)シャトワールに話しかけられなくなった。
おかげさまでエリックは今ここまで、男だとバレずに情報を集めて来られたのだが────
(……必要以上に目立つな。ああもう……なんでこうも騒がしいんだ)
エリックは内心で毒づきながら、シャトワールの高笑い沈黙を貫いていた。
もとより、背の高い女装した姿で人目を引いているのに、彼女の笑い声が加われば、ますます注目の的だ。迷惑極まりない。
(……エドモンド伯、どんな教育をしたんだ)とげっそりする。
本来、嫁入り前の貴族令嬢になら絶対についてくるお目付け役からも解き放たれて、浮かれ切っているのはわかるが『これは無いだろう』と力の限り思う。
──そんなエリックを片隅に。
必死に窘めるミリアに、シャトワールは全力で息を吸い込むと、




