「────なあ、聞いて」
「相当愛していたのでしょうねぇ。彼は彼女を失ってしまうと思ったのだとか。それが功を奏して、メンティラは宝珠の中から意識を取り戻し、完全な宝石となる前にヒトの姿に戻れたそうですよ」
「…………」
「その話題は、罹患者の間で瞬く間に広がりました。皆、家族を・友人を取り戻したい一心で語り掛け続けたそうですが……時間が経ち過ぎていたのでしょう。他のモノが元に戻ることは無かったそうですよ」
「――――スネーク……、俺で遊んでいるだろう」
話を聞ききったエリックから出たのは、心底呆れた音だった。
スネークのそれは、おとぎ話としてはよくできている。まるで女児に向けた幻想記のようだが、それをここで大真面目に話すこいつが理解できない。
しかし、スネークは憂いを帯びた表情で首を振るのだ。
「人聞きの悪い……、ミリアさんと接触できず、困っているのは私も同じです」
はぁ……と大げさに息を吐くヤツ。
俯き、嘆かわしいと言わんばかりに眉を下げ、口元を押さえ、悲壮感を出しながら、一拍。
切り替えたようにくるりと踵を返すと、奴は静かに首を振った。
「――まあ、たとえ、ボスが私の言葉を信じず、彼女が元に戻れなかったとしても……。私は恨みませんので、ご安心ください。しかしながら、可哀想に…………」
エリックが、ただ、嫌疑と不快を込めて見つめる中。
スネークはその糸目で意味深に宝石を見つめ、哀れを醸し出すと、
「ミリアさんはこの先、その宝珠の中で、永遠の時を過ごされるのでしょうねぇ……」
※
宝石化症候群。
続きはキンの$。
次から本編に戻ります。




