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「……宝石化症候群《ジェムノ・シンドローム》?」




「その石がミリアだって? いい加減にしろ」

「――それは、そうでしょうね。盟主であるアナタの耳には……入れてはならない事でしょうから」

「……? ――まさか!」



 一瞬。

 疑念が走り抜け、過った可能性に声を上げる。

 スネークへの嫌悪など吹っ飛ぶほどの、それ(・・)

 『思い当たる節』。



 

 《世界はそんなに綺麗じゃない》

 それらを体現するように、昔から、密やかに開かれている市場がある。

 盟主としては規制しなければならないが、スパイとしては情報の宝庫であり、利用価値のある暗部(・・)





 ────――闇市だ。




「……裏取引……人身売買か!」




 鋭い声が飛び出した。

 時間など要らなかった。

 冷静が消え失せていく。


 例えその病が本当にあったとして。

 例え人間が本当に宝石化したとして。


 元が人間だろうと、立派な宝珠は────十分に(・・・)商品になる(・・・・・)と馬鹿でもわかる。



 胸の中、不安が、懸念が渦を巻き始める。

 それを待っていたかのように、スネークの声はビスティーに響いた。



「ええ。これらの、宝石化した人間は――高く取引されるそうですよ。貴族を主に、ね」

「――下衆どもめが……!」


宝石化症候ジェム・ノ・シンドロームで宝石化した人間の売買が法に触れるかどうか、現在ではわかりません。なにしろ、法が間に合っておりませんからねぇ。それらは盟主さまの判断に委ねられることでしょう」

「どう判断しろって言うんだ……!」


「女神の教えに則るのが()でしょうねぇ。女神・ネム=ミリア様は人身売買を赦されておりません。ノースブルク諸侯同盟・禁止条約にも盛り込まれています。しかし――、人の欲というものは実に愚かです。珍しいものと分かれば、たちまち欲しくなる」

「…………」



 険しい顔で黙るエリックに、もはや奇病を疑う余裕など無かった。


 身近なミリアが病に侵されるまで情報が上がってこなかった理由も、何も言わずに消えた理由も、ピィの証言も。




 ────当てはまってしまう。


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