「お前の口から、ミリアのことを聞きたくない」(5P)
「――お前は。俺に喧嘩を売るために来たようだな。ここはアジト(しょくば)じゃない。つまらない挑発は他でやれ。従業員が怖がっている」
「ふふっ。私には、貴方の剣幕がそうさせているように見えましたが。……まあ、気のせいかもしれませんね」
(――ああ、癇に障る……!)
イラつくポーカーフェイス。
小さな靴音さえ不愉快だ。
なんでも知っていると言わんばかりの顔。思わせぶりな言い回し。些細な事でも女性関係につなげ煽る姿勢。全てにおいて嫌いだが、しかしスネークは仕事のできる男だ。
だからこそ。
――この男に隙など見せてはいけない。
ほんの僅かな綻びすら餌になる。
「――要件は」
「他でもありません。ミリアさんのことです」
ぴくっ……
(なぜお前からそれを聞かねばならない)
口から飛び出た相棒の名前に、まともに険しさを走らせた。
スネークの口からミリアの名前が出たせいか、それとも、自分の知らぬ情報を聞くのが腹立たしいのか判らない。奴が口を開く前に、腹の内で湧き出る文句をぶつけたい衝動に駆られるが──しかし────
彼は待った。
言葉を口にするのは悪手だ。
相手はスネーク・ケラー。
一体どこから下世話で思わせぶりな色恋トークに持って行かれるかわからない。
黙って次なる動きを待った方がいい。
そう判断し、だんまりを続ける中。
スネークは意味ありげに俯き、惹きつけるように|間《ま』を取ると、
「先ほどの幼子……ピィさん、でしたか? 彼女の言い分を聞いたでしょう? 「ミリアさんが居なくなった」と。私もその件で、ほとほと困っているのです」
「――――なんだと?」
馬鹿げた妄言を肯定するスネークに不審を返す。
あり得ない。何を言っている。
そう殺気を叩きつけるが、スネークはどこ吹く風だ。
澄ました顔で後ろ手を組むと、悩まし気に眉を下げ、




